「結論…普通に喋ったらええやんと思わせた時点で、ミュージカル映画は敗北を意味する。」レ・ミゼラブル(2012) 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
結論…普通に喋ったらええやんと思わせた時点で、ミュージカル映画は敗北を意味する。
今年のアカデミー賞作品最有力候補らしい。
しかし、ホラーやバイオレンスよりもミュージカルが最も苦手なジャンルであると痛感した作品で、2時間半にも及ぶ歌の洪水が苦痛で仕方なかった。
『ドリームガールズ』や『ダンサーインザダーク』etc.は歌とドラマとがキッチリ二分化されて、切り替えながら観賞できたので、まだ付いてこれたが、今作は台詞の90%以上を歌で延々と表現していく。
故に、ストーリー展開が全く頭の中に入らなかった。
市民革命で市街戦の真っ只中にもかかわらず、
お互い熱唱しながら撃ち合っている世界は、ミュージカルに馴染みの薄い日本人客には、どう受け止めて良いのか未だに解らない。
「♪オレはお前を許さな〜〜い♪」
って、歌うてる場合か!!
普通に喋ったらええやんと、冷めたツッコミばかり銀幕に投げ返す自分が居る。
感情移入の拒絶は、主人公のジャン(ヒュー・ジャックマン)と、彼を執拗に追い続ける刑事(ラッセル・クロウ)との関係性に顕著に現れていった。
冒頭でボロボロの前科者やったのに、次の章では、なぜか威厳ある市長に転身している。
彼がなぜ、どのような手段で出世したのかは一切説明してくれない。
疑う刑事も呑気に歌いながらやから、すぐに逃げられ、漂着先でも飄々と娘とセレブな暮らしをしている。
歌ってる暇あるなら、どう持ち直したのかも歌って欲しい。
刑事もパン1個盗んだだけの彼をなぜあそこまで執念深く追跡する必要性に疑問が絶えず付きまとう。
悪徳刑事というワケでもないし、正義の鬼刑事というワケでもない。
じゃあ、後半のルパン&銭形みたいな妙な友情は一体何なんだ?
第一、いつ芽生えたというのだろう?!
さっぱり理解不能。
キャラクターが掴めなければ、如何に心強く熱唱されても胸には響かない。
唯一の楽しみやったアン・ハサウェイ嬢も早々に坊主頭で死んでしまうし…。
ヘレナ・ボナム・カーター夫婦演ずるコソドロぶりも笑えず、ギャグが鬱陶しいだけだった。
ラッセル・クロウが意外と歌が上手かったのが驚きで、それが唯一に近い収穫かな。
では、最後に短歌を一首
『どん底の 夜明けを叫ぶ 天高く 熱き歌声 愛の痛みよ』
by全竜