「当時のスピルバーグが自身の映画との向き合い方を示している作品だと思う」未知との遭遇 ファイナル・カット版 ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
当時のスピルバーグが自身の映画との向き合い方を示している作品だと思う
この映画を見て当時のスピルバーグにとって、
未知(宇宙人)≒衝動を駆られるモノ、情熱が湧き出るもの≒映画
だと思った。
「未知との遭遇」で宇宙人に魅入られたリチャード・ドレイファスは映画監督の才能があったスピルバーグ自身なのだ。つまり、その追求の為ならば家族を捨てても構わない。
なんというか視聴した後良かったねって素直に思えない。なぜなら主人公家族は離散してるから。父が自分の衝動に生きるために嫁と子供を捨てたのだ。
また、この映画はスピルバーグの心象風景が端々に入っている。スピルバーグは夫婦喧嘩の絶えない家庭で育ったそう。リチャードドレイファスと嫁さんの喧嘩のシーンはとても辛い。その辛さは夫婦喧嘩を第三者・子供の目線から撮っているからでは無いかと思う。
リチャード・ドレイファスは宇宙人に出会う前、初めて登場した時からろくな父親では無い。子供の質問にまともに答えず嫌がらせで返し、約束も平気で反故にする。嫁さんも素直な良い人なのに邪険に扱う。リチャード・ドレイファスは最初から家族を大切に扱っていなかった。そんな男が宇宙人に魅入られたことで完全に家族を切る選択に突き進む話だと思った。
またデビルスタワーの近隣から住民を避難させる列車の様子などどうもホロコーストを思い起こさせる。
ただ、やっぱり才能は確か。初めてリチャードドレイファスが宇宙人と接触する場面。後方から抜き去る車の動きをヘッドライトの動きで示すシーンを入れた後、2台目の車のヘッドライトが宙に浮かび、観客にアレっと思わせる。
またジョーズでも健在だがレーダー室の場面や子供のアブダクションの場面など見せないで感じさせるのがまー上手い。そしてアブダクションされた子供が戻るか戻らないかで観客の心にどこかソワソワを残しておく。すると話が引き締まって観客が話に飽きずについて来てくれる。
当時のスピルバーグはまだ若く、結婚してしていなかったのか。若者が自分の才覚に生きる格好良さみたいなものを追い求めているように映った。
おそらくスピルバーグも結婚して子供が出来たから認識が変わったのだろう。ジュラシックパークのような映画が撮れたのだと思う。
抱っこされてる年頃に映画館で観た(というか居た)のですが、子供が吸い上げられるシーンが怖くも不思議なシーンとしてずっと鮮明に脳裏に焼き付いてます。