「スピルバーグ作品では最も好きな作品」未知との遭遇 ファイナル・カット版 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグ作品では最も好きな作品
「ファイナル・カット」版が午前10時の映画祭で劇場公開された。
「特別編」で見られたマザーシップの内部は「ファイナル・カット」では見られない。
これは、映画会社側が母船の内部を見せることを「特別編」製作の条件にしたもので、スピルバーグの意向には反していたためらしい。
だがしかし、スピルバーグがこだわったはずの、エンディングに織り込まれた「星に願いを」のメロディーが、削除されているのはなぜだろう。
ジョン・ウィリアムズの見事なアレンジと、巨大なマザーシップが地球から飛び立つきらびやかな映像が重なった、素晴らしいエンディングで大好きだったのだが。
この映画は、あらゆるカットが「これぞ、映画!」と言える、スピルバーグのこだわりの構図がめじろ押しだ。
点けっ放しのテレビ画面をスクリーンの手前端に配置して、中央奥に粘土で作ったデビルズタワーがそびえ立つ構図。
そのテレビ画面に実際のデビルズタワーが写し出される演出だ。
砂丘の向こうから車が跳ね上がって飛び出したと思いきや、へリコプターが後を追って飛んで来る構図。
砂丘を下から見上げているので、車もヘリコプターもまるで地中から噴き出して来たようだ。
軍から逃げ出した主人公たちが、たどり着いたフェンスの向こうにデビルズタワーを仰ぎ見る構図は、カメラが徐々に上に角度を変えていき、観客も一緒にデビルズタワーを仰ぎ見るようになっている。
そこに乗っかるジョン・ウィリアムズの音楽が感動的ですらある。
他にも、憎い構図は数えきれないほどある。
原題は「第三種接近遭遇」、キャッチフレーズは「We are not alone.」
宇宙から飛来してくる異星人は、侵略者などではない。
我々はこの宇宙にひとりぼっちではないのだ…というテーマは、当時は斬新だった。
宇宙人は侵略者が定石だったから。
説得力のある説明は全くないまま、ストーリーは進んでいく。
が、そんなことはどうでも良く、UFOとの交信を遂に実現し、マザーシップが降臨するクライマックスのスケールと美しさがもたらす圧倒的なカタルシス!
音と光でUFOと交信するという、ビジュアリストであるスピルバーグの見事な発想と、ジョー・アルヴスによるプロダクションデザイン、そしてジョン・ウィリアムズの迫力のスコアの素晴らしい融合。
このクライマックスのために、ここまでのすべてのシーンが積み上げられている。
主演のリチャード・ドレイファスは「ジョーズ」に続いてのスピルバーグ作品。
話題はフランソワ・トリュフォーの出演だった。
見逃せないのは、出ていってしまう妻役のテリー・ガー。
この頃、映画館に行くとスクリーンのどこかにテリー・ガーがいたような気がする。
ちょっと気が強いが、普通でまともな妻を好演している。
子供を連れて出ていったきりなのが、残念だが。
そういえば、あの妻と子供達は、主人公がUFOの母船に乗って旅立ったことを知らされるのだろうか…