HAZEのレビュー・感想・評価
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密室空間の謎
コンクリートの密室に閉じ込められた男、最後まで残る謎と見るに耐えない痛々しい場面の数々、部屋の構造が把握できない、十分身動き取れる広さに思えたり、何よりもとにかく不可解でご都合的な密室空間。
これを撮りたかった塚本晋也に理解不能、あの女優サンを久々に起用してまで。
ズギャン、ドカン、ボカン、ズキュン、バコン
闇の中での恐怖映像。何故この闇の中、しかも狭くて苦しい排気口のようなところに閉じ込められているのだ?!ひょっとすると、外の世界では戦争が始まっていて、俺たちは捕虜にされたのかもしれない。ひょっとして、カルト宗教団体に拉致されて拷問を受けているのかもしれない。とにかく脱出だ!という49分の映画。これはホラーなどという生易しいものではない。むしろ「ホギャーッ!」と叫びたくなるほどの戦慄映像だ。
何故なのかわからない。この『CUBE』にも似た閉塞感と恐怖感。爆発感溢れる大音量の音響効果によって、精神異常を起こしそうなほどなのです。いや、身体の自由もきかない緊縛感は『ジョニーは戦場へ行った』の感覚かもしれない・・・とにかく圧倒的なパワーが客席にまで押し寄せてくる。やがて一人の女と遭遇し、一緒に脱出しようと試みる男だが・・・
これほどまでに意味がわからない生命力(終盤にはわかりますが)。生きることの大切さをも訴えてきます。あぁ、生きて帰れてよかった・・・
原始の、欲望
「鉄男」シリーズの監督として知られる鬼才、塚本晋也が自身の主演で描く、密室サスペンス映画。
目が覚めると、そこは見知らぬ部屋。金属で覆われたその空間で閉じ込められた男は、腹部を刺されていた。目前に迫る命の終焉、無機質な恐怖、そして垣間見る、祈りを捧げ果てていく人間の姿。
このような設定を聞くと、まず観客の頭に思い描かれるのはお馴染みのシチュエーション・スリラー「SAW」だろう。だが、本作には犯人からの挑戦状も、ノコギリも、鍵も用意されていない。誰もいない隙間、何やら蠢く影、そして取りあえず刺されて痛い己の腹。それだけだ。
場面を噛み砕く説明台詞は極力省かれ、大写しになった男の狂い揺れる目、金属のこすれる「あの」音、そして鮮血を細かく重ねて提示し、観客の想像力を否応無しに刺激する。解決法も、男の過去も考える余裕は作られていない。とにかく、彼は死にそうなのだ、今にも。
極限の緊迫感と、絶望感が最期まで貫かれているために、観客は心身ともに衰弱していく。その先にあるのは、「原始的な欲望」。理屈も、言い訳も、抵抗も一切をかなぐり捨て、「痛い、うるさい、生きたい」この単純明解な感覚に支配されていく。常に何かの仕事に追われ、用事に追われ、理論的に毎日をやり過ごしている私達にとって、このすっきりした欲望と渇望はある意味、空っぽの心を楽しめる素朴な喜びがある。
途中にもう一人の人間が現れ、物語は動いていくが、それでも答えは見えない。救いは、与えられない。ただ、観賞後に観客の心に残るのは、動物として「必要不可欠」な感情だけだ。こんな空虚な開放感、きっと癖になる。
無駄に先を読み、頭ばかり疲労困憊に陥っている人こそ、この作品に触れてこんがらがった頭をすっきり、清潔にしてみてはいかがだろう。ただ、黒板を爪でひっかく遊びが大嫌いだった方には、ちょっと薦められない。
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