「スピ要素が強過ぎて好きになれない」ガメラ3 邪神(イリス)覚醒 Nightmare?さんの映画レビュー(感想・評価)
スピ要素が強過ぎて好きになれない
『ガメラ2』では「我が名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに」と一節を引いて神話世界とのつながりを感じさせたが、本作でイリスはモロに日本の「神話感」の剽窃(改変)を行ない、妙にスピリチュアルな感じになっていて、違和感がある、というか気持ち悪さを感じる。諸星大二郎のマンガなら許せるのだが、実写映画でこれやるとウワァとなる。イリスの幼体に可愛さを感じる少女って、どうなの? あのヌメヌメして長い首で触手が何本もあるアレに…。その辺がどうにも説得力がないんだよな。
レギオンとの対戦で世界中の「マナ(という超自然エネルギーらしい)」をガメラが大量消費したせいで、日本にギャオスが出現しやすくなったと説明されてるが、レギオンを倒すためにそんな大量のエネルギーを消費したのかよ。確かに絵面としてあのエネルギー集中感は面白かったけど、アレ1匹のためにエネルギー使い過ぎじゃないか。そりゃ確かにガメラが悪い(笑)。ていうかマナのエネルギーって全然大したもんじゃないんじゃないか。いっそカミナリでも利用した方が早いのではないか。…きっと柳田理科雄もそういうはず。
毎度登場の自衛隊だが、相変わらず戦力の逐次投入のクセが治らないようで、村を半壊させたヤバイ生き物が確認されたというのに、しかもギャオスもガメラもいる世界なのに、一個小隊の派遣で済ませようとするから、京都への侵入を許すことに…。
イリスと精神接続された比良坂綾奈の首に、だいぶ最後の方までイリスの勾玉がぶら下がっているが、もっと早くむしり取ってやる大人はいなかったのか。で、実際にそれをやるのは「日本の根幹に関わる」という意味深な女(巫女らしい・演=山咲千里で正体不明感は絶大)で、イリスの前でむしり取った勾玉を見せつけるのだが、なんか反応はイマイチ。そもそも、古代人はイリスに何をさせたかったのか、という疑問だけが残る。仮にヤマタノオロチ的なものを退治しきれず鎮め石で封印した(つまりイリスは作られたものではない)と考えるには、中学生がお遊びで風穴に侵入し鎮め石を退けた(ここにはアーサー王とエクスカリバーのエピソードが使われている)程度で復活してしまう。おまけにイリスを退治するとされる剣も用意されているのだが、たいした役には立たず…。本当にいったい何がしたかったんだ古代人。
平成ガメラ3作を通して思うことだが、ガメラと対戦相手の戦いの様相がいまひとつ明瞭でなく、たぶんこうなんじゃないかと考えながら形勢を見ることになって、緊迫感が薄い。派手に炎の上がる場面が多いのだが、そこまで広範囲かつ大規模に爆発なり延焼が起る元になる戦いがあったとは考えにくい場合がよくある。派手でいいのだろうが、そりゃあガメラだとしても人間を敵にまわすだろうよ、と思いたくもなる。
平成ガメラ3作品を通して観ると、こうした非現実的な作為が重要となる作品は、時代の風雪にさらされやすいことを感じる。ある時代にはごく自然に受け入れられていた価値が、明らかに異質なものに思われる。当時は面白いと思っていたはずなのに、すごく違和感があるものになっている。時代ではなく自分の解像度が上がったからなのかもしれない。
怪獣を現実世界に現出させるという行為は、それだけ難しいことなのだろうと思う。