モハメッド・アリ 黒い魂
劇場公開日:1974年10月9日
解説
元世界ヘビー級チャンピオン、カシアス・クレイことモハメッド・アリの生活を、二年半に及んで撮り続け、人間“アリ”を追及した記録映画。監督は「夜をみつめて」の総指揮にあたったリック・バックスクー。なお、この映画に納められている試合は次の通り。(1)ソニー・リストン戦(64年2月)--アリが世界タイトルを獲得した試合。(2)ブライアン・ロンドン戦(66年8月)--国内での試合相手がなく、欧州遠征した時の試合。3ラウンドKO勝ち。(3)クリーブランド・ウィリアムズ戦(66年11月)--アリ最高の試合のひとつで、あらゆる拳闘関係者の一見すべきものである、と言われている。3ラウンドKO勝ち。(4)ゾラ・フォーリー戦(67年3月)--7ラウンドKO勝ちして、九度目のタイトル防衛に成功したこの試合の直後、徴兵拒否してタイトルをはく奪された。(5)オスカー・ボナベナ戦(70年12月)--三年半のブランクから見事カムバックした(10月)後の、再起第二戦目。苦戦して15ラウンド判定勝ち。(6)マック・フォスター戦(72年4月)--日本で行なわれた試合で、15ラウンド判定勝ち。(7)ジェリー・クォーリー戦(72年6月)--再起第一戦(70年10月)で3ラウンドKOした相手との再戦。7ラウンドKOで再び勝つ。
1974年製作/51分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1974年10月9日
ストーリー
この世の最も“偉大なる男”に降りそそぐにふさわしい、まばゆいばかりに輝く太陽の光の中を、モハメッド・アリ(カシアス・クレイ)が走っていく。黙々と走り続ける彼の行手には、どんな名誉と栄光が待っているのか……。ペンシルバニア、デアー・レイク。ハーレムからバスに乗って子供たちが、アリのトレーニング・キャンプ見学にやって来た。アリは子供たちを集め、一緒に座って自分の信条を子供たちに語る。「アメリカに生まれた日本人は、日本の国を見る事がなくても、日本語を話す。イタリア人だって、イタリアを見なくてもイタリア語を話す。我々はアフリカから来たのだ。あなたを見ただけで、あなたがアフリカから来たことはひと目でわかる。しかしあなたは母国語を一言だって話せないじゃないか! だれでも各々の国語を知っているのに、なぜあなた方は知らないのか。分るだろう? 考えてみるべきことだ」。神宮外苑、朝もやの立ちこめる中で、アリがトレーニングしている。まだ陽は昇らない早朝の、白いもやをかき乱すように、黒いアリの美しい体が、ひたすらシャドウ・ボクシングをくり返している。〈襲いくる嵐に 真正面から突っ込め 勝ち抜く自信はあるはずだ白人なんかにつかまるな なぜって白人は本気になって教えやしない 白人はいつもお前を倒そうと狙っているのだから〉ハーレムを歩くアリ。子供たちの声が小気味よく響き渡る。「モハメッド・アリは大好きさ」「アリはブレイザーなんかやっつけちゃうんだ」「アリはモハメッドの牧師になるんだ」世界タイトルを獲得したリストン戦、日本でのフォスター戦、白人の英雄を叩きのめしたクォーリー戦等々、様々な試合の記憶がよみがえってくる。〈徴兵は狂気を集める 白人はお前の名を呼ぶが おまえは決して動かない おまえは無意味な人殺しは信じない その上お前はたったひとつの王冠を 失うかもしれない あの笑いはすべて過去のもの あの拍手もどこかに消えちゃった 白人たちは報復を願う そして 白人たちはお前から4年間を取上げる 4年間を取り上げる〉試合を終えたアリが、群衆に囲まれている。ファンの渦の中で、黒人としての誇りに満ちたりたアリの瞳は、何を見つめているのか……。
スタッフ・キャスト
- 監督
- リック・バックスター
- 製作
- 勝新太郎
- 撮影
- 中山繁
- 音楽
- サイモン・ストークス
- 歌
- リッチー・ヘヴンス