愛情十字路
劇場公開日:1948年1月15日
解説
脚本は「女生徒と教師」「はたちの青春」(武井韶平と共同)を執筆し「恥かしい頃」の製作を担当した柳井隆雄のオリジナルもの。監督は「リラの花忘れじ」につぐ原研吉、出演者は「リラの花忘れじ」の井上正夫と細川俊夫、「女だけの夜」の小夜福子と水戸光子、「激怒」の宇佐美淳、「若き日の血は燃えて」の高橋貞二など。ほかに山田英子がこの映画でデビューする。
1948年製作/63分/日本
配給:松竹・大船
劇場公開日:1948年1月15日
ストーリー
老詩人谷白秋は娘の百合とそのいとこ夏江を相手に富士山麓の別荘村にささやかなホテルをいとなんでいた。ある日百合が二人の客を連れてきた。それは峰と寺本といって二人はともに外地で生死を誓った仲であり、寺本は失明して帰ったため彼の恋人に背き去られた。その恋人をたずね峰は寺本をはげましここまできたが、寺本は女への失望から愛する音楽への情熱を失って途中自殺をはかったところを百合に救われたのである。やがて彼は快復したが、二人の所持金が乏しいので白秋に対して率直に寺本のバイオリンを代償にとってくれと頼んだ。夏江は寺本のために演奏会を提案してホテルの二間を開放して会場にあてた。客はわずかであったがあったが貴い寄付があつまった。この夜、村の不良の一人が寺本の耳につぶやいた。「相棒に気をつけなよ、今夜は一人で三千円も寄付した人があったぜ」、もちろんそれはでたらめであった。寺本はこれを信じ、三千円の件について何もふれない峰を疑いはじめた。見かねた百合も峰の証明に立ったが逆効果でしかなかった。ある日ホテルに二組の客があった。一人は舟木という検事でもう一組は女づれの新興成金であった。その夜三千円のために峰はねむられず、ふと通り魔のように成金氏の財布に手をつけた。その夜更け父にそむいて家出をした百合の兄信太郎が牧子という臨月の女をつれてひょう然と帰ってきた。白秋はがんこに信太郎を許さない。百合は二人のために泣いて父と争った。翌朝人のねむりのさめないホテルから寺本と峰、それに信太郎たちの二組が消えた。ホテルは成金氏の三千円盗難事件で大騒ぎとなった。峠で一休みした峰は寺本に三千円をにぎらせ「うそをついてすまなかった」とわびた。然し寺本の表情は動かない。その時巡査が自動車で追いついた。峰は一切を観念したとき寺本が突然叫んだ「犯人はぼくだ」その時バスがついて舟木と百合が降りた。「もう事件は解決した、君たちの今後の面倒はぼくが見る」。みんなの心は明るかった。