「オウム事件直前の社会のムードが分かる」MOTHER 最後の少女イヴ 森の人さんの映画レビュー(感想・評価)
オウム事件直前の社会のムードが分かる
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環境問題について考えさせる、子ども向け映画として作られたもの。
制作された当時(1993年)の空気が色濃く反映されており、二十年以上たった現在からみると、かなり奇異な印象を受ける。
この作品は、近代合理主義(理性重視・人間中心・科学万能)が環境悪化を招いたとして批判し、感性重視・自然回帰・宗教賛美を謳う。
例えば、劇中で、肉体が失われ「魂」となった「神」を、ヒロインが「願う」ことで目覚めさせ、ヒロインが「預言者」的に、「神」の言葉を代弁する。
そして、物語の最後には「神」によって人々の「魂」は「救済」され、「魂の集合体」となって、ヒロインの「魂」に ≪科学の力は不要である≫と語らせるのである。
これだけを見ても、当時の新宗教隆盛の影響を感じずにはいられない。
「近代を捨て、前近代に戻れ」と言わんばかりの内容であることに加え、その主張の正当性を「神のお告げ」(宗教性)に求めてしまったことで、現在に至っては、説得力がなく、現実味もないという悲しい作品になっている。
ヒロイン役の三石琴乃(セーラームーンの月野うさぎ、エヴァのミサトさん、ドラえもんののび太ママ)の熱演や、背景の作画、撮影技術(光の表現)など、良い点も多いだけに、普遍性のなかった脚本が悔やまれる。
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