海外特派員

劇場公開日:1976年

解説・あらすじ

ドイツの台頭で戦争の危機が迫っていた1939年、ニューヨークの新聞記者ジョニーは欧州へ派遣される。戦争回避のキーマンである大物政治家を追いやってきたアムステルダムで、暗殺現場に遭遇。犯人を追跡し、意外な事実を突き止めたことから彼自身も命を狙われるようになる。美術は「風と共に去りぬ」で知られるウィリアム・キャメロン・メンジーズ。150万ドルの製作費を投じ、大掛かりなセットのもと撮影された。飛行機の撃墜シーンなど撮影技術も見事である。

1940年製作/120分/アメリカ
原題または英題:Foreign Correspondent
劇場公開日:1976年

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第13回 アカデミー賞(1941年)

ノミネート

作品賞  
助演男優賞 アルバート・バッサーマン
脚本賞 チャールズ・ベネット ジョーン・ハリソン
撮影賞(白黒) ルドルフ・マテ
美術賞(白黒)  
特殊効果賞  
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Foreign Correspondent : (C) 1940 STUDIOCANAL

映画レビュー

4.0 海外特派員

2026年1月23日
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鑑賞方法:映画館

「風と共に去りぬ ('39)」の大者プロデューサーであるデヴィッド・O・セルズニックが翌年の1940年に製作した「レベッカ ('40米=セルズニック・インターナショナル)」の監督として起用されたアルフレッド・ヒッチコック。ダフネ・デュ・モーリアのゴシックロマン長編小説が原作だけに、英国調のムードを上手く出しながらも、セルズニックの下では、ヒッチコック自身が好きなように撮れる作品ではなかったことが知られている。
対して、渡米第2作目の「海外特派員」は、ジョン・フォード監督の「駅馬車 ('39)」や「果てなき線路 ('40)」の製作者として知られるウォルター・ウェンジャー・プロの作品である。当初、ヒッチコックは、主役にゲイリー・クーパーを起用したかったのだが、当時のハリウッドでは英国とは異なり、この手のスパイ物のサスペンス映画自体がB級ジャンルとみなされていた為に、クーパーから出演を断られてしまっている。結局、主役にはジョエル・マクリーが起用され、相手役の女優もほぼ無名に近いラレイン・デイに決まり、B級ランクの作品となった。しかしながら、これによって「レベッカ」製作時とは異なり、かなりの権限を手に入れたヒッチコックとしては、自分がやりたいことが出来た訳であり、結果的に映画ならではの魅力に溢れた傑作に仕上がった。
「海外特派員」は、1940年代に撮られた計13本のヒッチコックの長編作品の中でも、映画ならではの面白さという点ではNo.1と言ってもよい。この当時のハリウッドで、数多く作られた戦意高揚映画の一本であるにもかかわらず、これほどまでに見事な出来栄えのサスペンス映画は他には見当たらない。この映画における敵側のスパイや暗殺者はナチスドイツであるにもかかわらず、この映画がナチスドイツの勢力拡大に貢献した政治家ゲッべルスのお気に入りの映画だったということからも、政治的な問題とは関係なく、ただただ純粋映画として、如何に良く出来ていたかが分かる逸話である。
名場面が目白押しという点では、後年に作られた巻き込まれ型サスペンス映画の集大成であり、且つA級メジャー作品である「北北西に進路を取れ ('59米=MGM)」に匹敵する程だ。
雨のアムステルダムで開かれる平和会議の会場前での暗殺事件、傘の波を掻き分けて逃げる犯人、それを追うマクリー演じる特派員。
そのままカーチェイスのアクションに発展し、街を出て郊外に入るや、オランダならではの風車小屋が視界一杯に拡がるシーンに繋がる。行方をくらました暗殺者を乗せた車。マクリーの後に続いて来た警官隊は皆、先へと進む。マクリー、デイ、彼女の友人の記者スコット(ジョージ・サンダース)の三人が車から降りての会話のシーン。一陣の風が吹いて飛ばされた帽子を拾いに池に向かって走るマクリー。その時、風車の動きが止まり、逆方向に回転し始めたことに気付くマクリー。これを伝えに戻るも、笑って信じてくれない二人。マクリーのみがその場に残り、デイとサンダースは車で警察の後を追う。するとまた風車の動きが止まり、風向きとは逆に動きだす。ハッとして二人に声を掛けようにも、既に彼等を乗せた車はその場を去って遠ざかっており。こんな展開が、全て主人公のマクリーの表情を捉えたショットと彼の視線となって描かれる対象を捉えたショットとの繰り返し、所謂リアクション・ショットで語られていく。
実際に、ロンドンやオランダに第二班撮影スタッフを送り込んでいるとはいえ、大半が1940年のハリウッドで撮られたとは思えないくらい欧州的な雰囲気がよく出ている。特に、前記の風車小屋の外部及び内部の美術装置の仕上がりが素晴らしく、撮影も見事だ。美術監督が、「来たるべき世界 ('36)」のウィリアム・キャメロン・メンジースとアレクサンダー・ゴリッツェンで、撮影監督が、デンマーク映画界の巨匠カール・ドライヤーの「裁かるるジャンヌ ('28)」、「吸血鬼 ('32)」のカメラマンで、1930年代半ばにハリウッドに渡ったオーストリア(現ポーランド)出身のルドルフ・マテなのである。ドライヤーの「吸血鬼」にも不気味な風車小屋のシーンがあり、強烈な印象を残しているのだが、同じ撮影監督が8年後のハリウッドで、更に見事な風車小屋シーンを撮影していたことが分かる。更に脚本家に目を転じると、シナリオライターのチャールズ・ベネットとジョーン・ハリソン女史は、英国時代からヒッチコックと仕事をしている常連スタッフであり、また台詞を担当しているのが、英国の小説家で「失われた地平線」や「チップス先生さようなら」が有名なジェームズ・ヒルトンと映画「ジョーズ ('75)」の原作者として有名なピーター・ベンチリーの祖父に当たる小説家、コラムニスト兼俳優として活躍したロバート・ベンチリー(本作にも脇役として登場)と言った超A級のスタッフなのである。
この映画、脇役もなかなか素晴らしい名優揃いで、ジョージ・サンダース、ハーバート・マーシャル、エドマンド・グウェンが英国人、誘拐されるオランダの外交官ヴァン・メア役を演じているのが、亡命ドイツ人俳優のアルバート・バッサーマンであり、やはり欧州色を上手く出している。
映画のクライマックスとなる撃墜された旅客機が海に墜落するシーンが凄い。コックピットからフィックスで、海面が近づいて来て、墜落し、フロントガラスが割れて海水が機内に一気に流れ込むまでをカットを割らずにワンショットで捉えている。またその後の機内から脱出して、荒れ狂う海に浮かぶ機体に乗客が乗り移るシーンもリアルで素晴らしいのだが、これらは撮影所のプール内に組まれたセットであり、背後の海のシーンは当然スクリーン・プロセスであることは分かっているのだが、余りにも見事な合成で、本物の海で撮影している様に見えるのだ。実際に映画館(八重洲スター座)のスクリーンで観た印象である。
さて、主役のジョエル・マクリーとラレイン・デイは、B級映画の俳優のようなことを言ったが、決して悪い訳では無い。特に、マクリーは自然体で、所謂演技っぽい演技をしないところが良いのとシリアスになり過ぎず、ユーモラスな面も出していてなかなか良かった。後日談として、ゲイリー・クーパーが『あの時「海外特派員」への出演を断ったことを今でも後悔している。』とヒッチコックに言ったことを、「映画術 ヒッチコック/トリュフォー (晶文社)」の中で、ヒッチコック自身がトリュフォーに自慢げに語っていたのが印象的だった。

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ナオイリ

4.0 またしても美人がいい!

2025年11月10日
PCから投稿

ヒッチコックには、いくつか政府の依頼で作ったとしか思えないようなプロパガンダ映画がある。これも、あらすじを少し読んだだけでいかにもその類に見えた。だから私は長い間、この映画を避けてきた。今回ようやく観たのは、日本でもアメリカでもレビュー評価が非常に高かったからだ。

観終えてみると――単なるプロパガンダ映画ではなかった。
ヒッチコックらしさが随所に光っていて、映像的にも物語的にも惹きつけられた。特に風車のシーンが印象的だ。飛行機の使い方は違うが、のちの『北北西に進路を取れ』を思わせる迫力があった。あの風車、どうやって撮影したんだろう?現実離れした異様な雰囲気が漂い、まるで別世界に迷い込んだような不穏さがあった。内部の立体的な構図の妙も素晴らしく、映像の奥行きとサスペンスの融合が見事だった。

そこに至るまでの展開は正直、何を狙った映画なのかつかみづらく入り込めなかった。だが風車の場面で一気に惹き込まれた。その後の悪役による襲撃シーンはややもたつきがあり、犬の登場には首をかしげた。逃走劇の映像自体はスリリングで、ビルを俯瞰で捉えたカットなどヒッチコックらしい奇妙な魅力があった。HOT HOTELという文字が妙に不気味で印象に残る。
さらに終盤、ちょっとした叙述トリックを使って犯人を追い詰めるくだりも秀逸で、ヒッチコックのアイデアの冴えが感じられた。

全体としては少しドタバタしており、私は日本人なので登場人物の名前や顔を覚えづらく、話の整理に少し苦労した。ラストのアクションは「まだ続くのか」と思うほどくどく感じたが、演出の力で最後まで引っ張られた印象だ。
脚本自体は決して洗練されてはいないが、ヒッチコックの演出力で独特の魅力を放つ作品になっている。結局のところ、これは確かにプロパガンダ映画ではある。だが同時に、ヒッチコックらしい映像の妙味に満ちた、極めて個性的な一本でもあった。

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KIDOLOHKEN

4.0 緊迫した時代を背景に、粋を極めたサスペンス演出を披露したヒッチコック監督の傑作

2025年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

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Gustav

4.0 これは第一級のクライム・サスペンスだ。

2024年10月9日
PCから投稿

第二次大戦直前の1939年。新聞記者ジョーンズは、渡欧の上で、オランダの外交官ヴァン・メアへの取材を命じられる。彼は現地で、万国平和党党首フィッシャーと、その娘キャロルに出会う。

ヴァン・メアは、銃殺される。ジョーンズは、キャロルの友人で記者のフォリオットに出会い、真相を探し求める。ジョーンズとキャロルは恋に落ちるのだが、、、。

政治的なメッセージを含んでるが、全く気にしなくても、そういったことが分からない方でも、すんなりと最後まで、娯楽映画として楽しめる。行き違いも巧みだし、ロマンスを絡めた、第一級のサスペンスだ。

国際的な謀略を究明する記者を描いた、クライム・サスペンス。全編を通じて、カラッとした明るさがある。緊張感があり、胸躍るエピソードの連続で、コミックリリーフも交え、テンポの速さも心地よく、非常に軽快なサスペンスだ。

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岡崎仁