肉体の暴風雨
劇場公開日:1950年9月28日
解説
オール読物所載の田村泰次郎の短篇小説「土砂降り」を館岡謙之助が脚色し、「歌姫都へ行く」の佐藤武が製作、監督に当った。主演は「東京のヒロイン」の入江たか子、「火の鳥(1950)」の藤田進「エデンの海(1950)」の大日方伝の他、夏川静江が助演する。
1950年製作/日本
配給:東宝
劇場公開日:1950年9月28日
ストーリー
待ちわびていた夫、忠彦をシベリヤから七年ぶりに迎えた三千代は意外な告白をして彼の前に許しを乞うた。戦争末期から終戦直後の混乱期を三千代は女一人の身をよく生き耐えて来た。転落する女たちに反発を感じ、彼女はひたすら忠彦の生還を希って、か細い身体に韃って買出しに出かけ生活の糧としていたが、それも弱い三千代には永くは続かず、偶然、車中で知り合った岡崎の好意で、彼の雑誌社に職を得ることが出来た。岡崎は千葉の田舎に妻子を疎開させたまま週に一度千葉まで通っていた。社内の同僚は二人の間を何かと疑いの目で見たが三千代は岡崎の好意以上の感情を感じながらも、夫忠彦への愛情を心の支柱に清い交際を続けていた。やがて岡崎は妻子を呼び戻し、その平和な家庭を見た三千代は心の危機の去ったのを覚え、安心した。そして三千代にも、ついに夫から帰還の電報が届き、彼女はその喜びを早速岡崎に報せた。二人はお祝いに晩食を共にし、夜更け、折からの土砂降りに、三千代は岡崎を自分のアパアトの室に招き入れた。昨夜まで二人は潔白だった。だが、夫帰る、の報せに張りつめた気が一時に緩んで、と三千代は忠彦の前に泣き伏した。忠彦は三千代の止めるのも聞かず、岡崎家に走ると彼を戸外に呼び出し、いきなり殴りつけた。殴り続け、気がすむまで殴って、忠彦はこれで全てを許す決心だった。夫の背後には感謝の涙を浮べる三千代の姿があった。