天皇の帽子

劇場公開日:

解説

今日出海の原作を、「きけわだつみの声(1950)」と同じく、マキノ光雄が製作を、坪井与が企画を受け持っている。脚本は、「きけわだつみの声(1950)」「レ・ミゼラブル」の棚田吾郎に、村松道平が協力している。演出は、「東京キッド」の斎藤寅次郎と「泣くな小鳩よ」の毛利正樹の協同監督。出演者は「妻恋坂の決闘」の片岡千恵蔵に、「夢は儚なく」の折原啓子、その他千秋実、斎藤達雄、市川春代、山口勇などの中堅が助演している。

1950年製作/87分/日本
配給:東映
劇場公開日:1950年12月1日

ストーリー

成田彌門の養父信哉は封建というものに衣を着せたような男で、長く伯爵家の家扶を務めていたので、彌門は、伯爵家の若君藤麿と一緒に武家教育を徹底的に仕込まれた。しかし若殿は信哉を後見役に早くからドイツへ留学したが、彌門は、父におとらず頑な養母に育てられ、中学を九年かかって卒業するというコースを辿っていた。しかし、人に優れて堂々たる身体と、大きな頭と、立派な筆跡との持主であった。藤麿は留学から帰朝すると、生活の諸式を新しくし、使用人も減らしたが、父の死後も彌門は相変らず藤麿のお相手役をおおせつかった。彌門の何よりも辛いことは、石部金吉の彼が藤麿の女遊びにお伴させられることであった。そして、彼の人並はずれて大きな頭を「水頭」、つまり水が詰まった頭と呼んで人前でなぐさみものにされることだった。しかし女中のお芳だけは、彼に同情して慰めてくれ、二人の間に純な愛情が芽生えた。藤麿は新しがりのくせに、「不義はお家の法度」と、二人を追い出してしまった。義母の綾乃は二人の結婚を認めてくれた。彌門は伯爵家を首になると帝室博物館に職を得、彼の融通の利かない性質もここでは返ってそのところを得た感で、殊にその能筆は重宝がられた。折しも大正天皇御即位記念切手を売出すについて、その絵に随身をあしらう意匠の写真のモデルに彼に白羽の矢が立ち、見事にその役目をやってのけた。そこで彌門の名は一躍あがり、某侯爵に可愛がられるようになった。そして侯爵家の宝物である大正天皇の帽子を頂いた。彼の頭上にある天皇の帽子。彼の人生は楽しさの頂上にあった。ある日旧主人藤麿から使いが来てその邸へ招かれた。彼をさんざん愚弄した藤麿は遊蕩の末発狂して病床に哀れな姿を横えていた。彌門は、改めて自分の幸福を想い天皇の帽子をなでてみるのだった。

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