海峡の鮫
劇場公開日:1950年10月14日
解説
「禿鷹」「海賊島」に次ぐ平尾善夫の製作で、脚本は、「大江戸七変化」の柳川真一、「千丈ヶ嶽の火祭」の安達伸生が監督をしている。撮影は「復活」の武田千吉郎が担当している。配役は「戦火の果て」を終ったばかりの二本柳寛、「海賊島」の岡譲二、「七つの宝石」の日高澄子、「密林の女豹」「午前零時の出獄(1950)」の荒川さつき、その他進藤英太郎、高田稔、河野秋武など。
1950年製作/65分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年10月14日
ストーリー
この映画は「海上保安隊出動」という別題がある通り、海の境界線を護る海上保安隊の身命を賭した活動を紹介しようとする意図を持っている。日本と朝鮮とを連絡する飛石のような対馬。その厳原という漁村は、一躍千金を夢見る密輸業者や、国外へ逃亡を企てる犯罪者の巣となっていた。こうした無法者に対抗して、海の境界線を護るものは、海上保安隊員であって、無法者の数の激増に備えて、保安隊員も下関から増強されてきた。新任の保安隊員の中に、田部三六がいた。田部は厳原へ到着して驚いたことがあった。それは、美沙子という美しい海女を知ったことと、美沙子の兄が、自分と同じ海軍の部隊にいて生死を共にとまで誓合った親友、荒田英次であったことだった。終戦と同時に袖を分けた二人であったので、田部は荒田がその後どんな生活をしていたのか知るよしもなかったが、どうやらあまり良くない目的を持って厳原へ帰って来ているように察せられ、出来ることなら友のそうした悪事を未然に防ぎたいと、それとなく荒田の行動を監視していた。荒田は田部の察したように、東京で殺人を犯し、国外逃亡を企てているのだったが自分の滞在している厳原館のマダムに想いを寄せていた。マダムの京子には、小堀という良くない旦那がついていた。小堀は闇ブローカーに行き詰まって、朝鮮への密航者のブローカーをしようとしていたが、その相棒に荒田を引き込んで、密航船を運転させようと企んだ。荒田と付き合っている田部は、保安隊員から、忠告をされたり、また疑いの目を持って見られたりしていたが、荒田をどうしても正道に立ち返らせたいと思う田部は、小堀の企てや、荒田がそれに引込まれそうなことを薄々感付きながらも、これを皆に秘密にしていた。しかし田部の苦心も水の泡になった。荒田が小堀等と共に、厳原を密航船で出発したことをいち早く美沙子から知らされた田部は、このことを早速保安隊長に報告、その追跡に乗り出した。荒田は、密航船を運転しながら、親友田部の忠告をしみじみと思い出し、保安隊が追跡して来ると知ると、わざとその速力を落とした。そして、どの道、向うへ着けば荒田を殺してしまうつもりでいた小堀に射たれて死んだ。田部が密航船へ踊り込んだ時、瀕死の息の下から荒田は妹美沙子のことを田部に託した。