妻も恋す
劇場公開日:1950年3月19日
解説
企画は黒岩健而の担当。原作は吉屋信子(婦人世界連載)で、「ホームラン狂時代」の山崎謙太と、岡田豊が協力執筆し、「人生選手」につぐ田中重雄が監督する。カメラは「愛染草」の山崎安一郎の担当。主演は「女の顔」の水戸光子と「妻の部屋」「続不良少女」の龍崎一郎で、それに「月の出船」の小柴幹治、「魔の黄金」「氷柱の美女」の相馬千恵子、「氷柱の美女」の美奈川麗子らが出演する。
1950年製作/86分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年3月19日
ストーリー
千栄は父がなく、母は幼いとき男と出奔し、伯母のお濱に育てられ、光男と結婚したが、光男は地だらくで、千栄をおいて関西のダンサーやよいの所へ行ったきりで、千栄はお濱の店「美佐吉」で働いた。その頃実母お葉が異父妹利栄を連れてうちぶれて帰って来た。が、伯母は、お葉を憎んで千栄に近づけない。千栄は懐かしい母をなんとかしたいと思った。このようなとき千栄の相談相手は博史だった。博史は戦争中、千栄と工場で知り合った技師で、最近再会し、今は何くれとなく千栄の相談に乗ってくれるのだった。博史は妻則子をなくし、一子新一と二人で暮らしていたが、亡妻の母勝子は、戦争で夫を失った則子の姉康子と博史を一緒にしようと思い、康子はしつこく博史に寄りつくのだった。だが博史の心の中には千栄の姿が焼き付いて、博史はお葉と利栄を引き取ろうとするが、お葉は、急に病を得て死んでしまい、利栄だけが引き取られた。ある日、博史の家を訪ねた千栄は、急に博史が盲腸炎を起こして帰ることが出来ず止まったが、ここで二人の愛情は結ばれた。だがそこへ現れた康子が、博史の再婚の相手だと知って、さびしく去る千栄だった。千栄の悲しみは、でも、博史がなおって訪れ、康子と結婚の意志のない事を聞いて千栄は心安らぐ。だが夫、光男が罪を犯したことを知った千栄は、光男に面会し、夫を甦生させることを決心し、博史に最後の別れを告げるのだった。当の光男は博史の尽力で釈放されたが、かえって博史を逆うらみし嫉妬に狂って街に飛び出して自動車にひかれて死んでしまう。光男の死後自分の幸福を考える気になれず、諦めの日を送る千栄だった。一方失意の博史は、康子と一緒に北海道へ行くために旅仕度をしていた。と、千栄の来るのを毎日待ちわびている新一の眼に、砂浜の遥か、彼方、立ちすくむ千栄の姿が見えた。博史も、それを知って駆け出した。「千栄さん!」その声を聞きながら、康子は、二枚の切符の一枚を破り捨てるのだった。砂浜で、博史と千栄の抱き合った姿が夕日に輝いていた。