一匹狼(1950)
劇場公開日:1950年2月5日
解説
「歌の明星」につぐ根岸省三の企画、菊岡久利の原作『怖るべき子供たち』の映画化で、「石中先生行状記(1950)」につぐ八木隆一郎の脚色、監督は「母椿」の小石栄一、カメラは同じく「母椿」の姫田真佐久が担当。出演は、「人生選手」「銀座三四郎」の藤田進、「母椿」「暴力の街」の三條美紀の主演に、菅井一郎、片山明彦、羽鳥敏子等が共演しているほか石井美笑子がカムバックする。
1950年製作/83分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年2月5日
ストーリー
腕力が強くて、弱気を助け、強気を挫き街の女たちからも敬愛されている男、山鹿英樹は銀座で古本屋を営んでいた。一匹狼という異名をもった英樹は浮浪児たちをとくに愛情をもって面倒を見ていたが、ある朝のこと、ボストンバックを一つさげてぼんやりたたずんでいた田舎娘の小野キムを救って、顔なじみの洋裁店のマダム勝子にたのんで雇ってもらうことにした。ある日のこと、警視庁に働くかつての戦友小野にめぐり合い、英樹は子供好きな点ですっかり共鳴し、飲み歩いたが、その留守に、ひそかに英樹に思いを寄せるキムが古本屋に訪ね、留守番の子供に、英樹に春江という許婚があると聞き、キムは放心したようにクラブ・アンカーにウサばらしをしにいった。そのクラブは英樹の父、山鹿英助が経営する一方、高利貸しで暴利をむさぼっている店だった。たまたま飲み歩いて英樹もクラブに来て、酔っているキムにバッタリ合ってしまう。英樹はキムに青春を大切にしろとさとした。二人の心は、その時初めて歩みよったのだ。しかし喜んだのもツカの間キムが洋裁店に帰ってみると、店は空き巣に荒らされ留守をしたキムの責任ではあったが、莫大な損害は、キムにはとても払いきれなかった。マダム勝子は、雇い入れる時、英樹が全責任を持つという約束だからと、損害の三十万円を取り立てる。キムには以前にも留守をして洋裁店を荒らされた経歴があるというのでまるで罪人扱いをされてしまった。キムは思い余って自分の貞操を売って英樹を救う決心をしたが一喝される。キムの純情さに心ひかれた英樹は、傷心のキムに結婚を申し込んだ。その事件を聞き込んだ父の英助は、後妻の連れっ子の春江を二百万円の持参金つきで英樹に押し付けようと計ったが、英樹にも、当の春江からも拒絶されてしまった。英助はこんどは、待合いに英樹の父としてキムをおびき寄せキムの借財返済金と、キムの身体との交換を申し出た。それは英樹とキムとの離間策だった。その企みをキムに烈しく面罵され、英助は生まれて初めて父としての愛情に目覚めることが出来た。キムが席を立ってから、英助は父親らしく無条件で英樹あてに小切手を書いて使いにもたせた。その帰途待ち伏せた顔役の戸田に襲われ、あわやという瞬間、サブと共に駆けつけた英樹が身代わりとなって倒れた。急を知って駆けつけた小野に戸田は逮捕されたが、その時サブは戸田の子分の為にすでに殺されていた。サブを殺したのはお前の暴力だ!と小野は叫んだ。暴力を賛美していた己の行為を恥じた英樹は傷もいえたある日、高原から、少年収容所で働くようになった春江に便りを出した。東京はサブのことが思い出されて傷ましすぎる。そしてキムが近くお母さんになり僕は親父になるというのだった。