なやましき五人男
劇場公開日:1950年1月10日
解説
「おどろき一家」「歌うまぼろし御殿」につぐ太泉自主作品、原作は「あきれた娘たち」(新東宝作品)「おどろき一家」につぐ阿木翁助の執筆、脚本は「肉体の門(1948)」の製作、演出をした小崎政房、監督は「花嫁と乱入者」についで小杉勇が太泉で初のメガホンをとる。カメラは「どぶろくの辰(1949)」「花嫁と乱入者」の伊佐山三郎、出演は「女の顔」の木戸新太郎「おどろき一家」の花菱アチャコ、三木鶏郎、新人宮城まり子がデビューするほか、左卜全、高屋朗、伊志井寛に、柳屋金語楼が特別出演する。
1950年製作/76分/日本
配給:東映
劇場公開日:1950年1月10日
ストーリー
小市民相手の飲み屋「なやまし亭」の主人勘太とお福は江戸ッ子気質の似た者夫婦で近代的な一人娘たま子はもっぱら常連の左山膳太郎の持論、女子も大いに野球をすべしの感化を受けてすっかり野球ファンとなり、近所の空き地でキャッチボールに余念がない。たま子は野球遊びから、質屋の息子新吉と親密になった。新吉の父親三造は評判の守銭奴で、新吉が女の子と球投げしたり、妹のみよが貧乏音楽家と恋愛しているのがカンにさわって財産は譲れないと言い出し家の中は面白くなかった。そこで勘太が知恵を絞って、常連の引揚者大川医師に三造の誤診を頼んだ。三造は大川医師にローソク病といって生命はあと二カ月だと宣告された。びっくりはしたがそこがけちん坊の三造、他の医師にかかる診療料が惜しくてあきられてしまう。さて二カ月の寿命をいかに過ごそうかと、新吉のいうなりに大川先生の行く母子寮の慰問やら付近でキャッチボールをしている若い人達の仲間入りをさせたり、落語でけちん坊を悟したり、みよの恋人二木を頼んで諷刺音楽を聞かせたり、あらゆる手を使ってガンコな三造の頭の切り替えを計った。たとえ人生を生まれ変わらせるためのローソク病という、でたらめの病名にしろ、大川先生は、医師として責任上苦しんだ結果、もうころ合いはよしと三造の病気を治すことにした。丁度そこへみよが内緒で二木の質屋の楽器と洋服を出して上げたおかげで出来た契約のお礼だと札束を積んだので、三造が目を回して倒れてしまった。さっそく大川先生はその機会を利用して注射一本で病気全快を告げたので、三造もやっと肩の荷を下ろした。さしもガンコ親爺もすっかり過去を後悔し、素直な心になることが出来た。新吉と左山の努力で結成された女子野球チームが、ある晴れた日の公園で「レッド・ハート結成記念大会」が開かれていた。応援に集まった「なやまし亭」を囲む人達の明るい顔がみえる。