青い山脈(1949)のレビュー・感想・評価
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青春映画として有名だが、意外にも日本的なムラ社会との闘いが描かれている様に感じた
今井正 監督による1949年製作(91分)の日本映画。
配給:東宝
とても有名な映画であるが初めての視聴。今井正監督作も初めてかも。古い映画で、テンポの遅さはやはり感じた。
キラキラと明るく青春青春している映画というイメージがあったのだが、実際はかなり違っていて、古い日本的な村社会との戦いを描いた様な映画で、今に通じるものがあってビックリ。
舞台となる田舎町(岐阜県恵那・中津川でロケしたらしい)の女学校の生徒たちは、転校してきた同級生(杉洋子)が男子学生(池部良)と一緒にいるだけで、学校の名誉考えてと偽ラブレターで彼女を陥れて糾弾しようとする。都会から来た若い女性教師(原節子)は彼女たちを諭そうとするが、反発し親たちや村有力者も巻き込み大きな騒動となる。
女性教師に好意を持つ校医(龍崎一郎)、先生に憧れる女子高生(若山セツ子)、その姉の芸者(木暮実千代)、池部良の友人(伊豆肇)も、原節子の応援団となり、封建的なムラ社会と戦い、勝利を得る(女学校の理事会で、原節子はクビを免れる)。
まん丸メガネの若山セツ子のキャラクター設定はコミカルで、なかなか良かった(とても可愛らしい彼女がその後、精神を病み55歳で自殺は何とも悲しい)。1918年生まれの池部良の学生役には、流石に溌剌感が乏しく、無理を感じてしまった。杉葉子さんには野生的なものは感じたが、ヒロインとしての魅力はあまり感じられなかった。当時はどんな受け取り方だったのだろうか?
女生徒たちに、ストライキに参加するような娘はお嫁に行けなくなってしまうと話す田中先生(生方功)が、いかにも存在しそうで印象に残った。誰よりも、木暮実千代演ずる校医に恋心ある芸者梅太郎が、理想主義的だが危うい様にも見える原節子を前にして分をわきまえ校医を譲り?、封建的男たちをやり込める姿を、とても魅力的に感じた。
杉葉子を嵌めようとした山本和子が泣いて詫びを入れて、杉と仲直りする展開が、青春映画だから当然とは言え、とても白々しいと感じてしまった。どこかで、日本社会糾弾映画の様に感じていた自分がいた。また、いかにもヒトの良さそうな田中栄三による校長先生が、古い体制の狡猾さを体現するクセモノにも思えた。
監督今井正、脚色井手俊郎(洲崎パラダイス赤信号等)、今井正、原作石坂洋次郎、製作藤本真澄、撮影中井朝一、美術松山崇、音楽服部良一、録音下永尚、照明森弘充、編集長沢嘉樹、製作主任根津博、協力製作井手俊郎 、代田謙二。
出演
池部良金谷六助、杉葉子寺沢新子、若山セツ子笹井和子、原節子島崎雪子、龍崎一郎沼田玉雄、木暮実千代梅太郎、山本和子松山浅子、三島雅夫井口甚藏、飯野公子北原先生、田中栄三武田校長、藤原釜足岡本先生、花沢徳衛百姓、伊豆肇ガンちゃん、立花満枝駒子、島田敬一八代教頭、生方功田中先生、女性教師三田國夫中尾先生、長浜藤夫易者、河崎堅男松山浅右衛門、津田光男与太者A、堺左千夫与太者B、岩間湘子野田アツ子、江幡秀子田村静江、上野洋子看護婦、小野先生諏訪美也子、原ひさ子白木先生。
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