「民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います」青い山脈(1949) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います
何度となくリメイクされた人気タイトルのオリジナルはこの今井正監督の1949年版です
日本映画のオールタイムベストにリストアップされているのも本作です
調べてみるとこうでした
本作を入れて都合5回の映画化です
つまり超人気コンテンツです
監督、雪子、沼田、新子、六助、配給
1949年版
今井正、原節子、龍崎一郎、杉葉子、池部良、東宝
1957年版
松林宗恵、司葉子、宝田明、雪村いづみ、久保明、東宝
1963年版
西河克己、芦川いづみ、二谷英明、吉永小百合、浜田光夫、日活
1975年版
河崎義祐、中野良子、村野武範、片平なぎさ、三浦友和、東宝
1988年版
斎藤耕一、柏原芳恵、舘ひろし、工藤夕貴、野々村真、松竹
さすがに東映版はないですねww
こうしてリスト化してみると、配役だけでそれぞれが本作のオリジナルをベースに、どこに焦点を当てて色付けして映画化しようとしたのかが伺えてきますね
原作は1947年6月から10月にかけて朝日新聞に連載された小説です
つまり新憲法が施行された翌月からの連載だったのです
戦後民主主義の教科書として当時大変な人気を博したそうです
その最初の映画化ですから、映画も大ヒットするのは当然でしょう
新憲法の精神を象徴する存在だったのだと思います
原作者の石坂洋次郎は弘前の生まれで、当地で女学校の教員であったので本作の女学校のモデルはそのときの記憶であろうとされているそうです
本作はこの原作を少しアレンジしながらも真っ正面から取り上げて、民主主義の日本をこれからこの若い世代が作り上げていくのだというメッセージに溢れています
本作は実は2部構成になっています
前編は本作で新子編と冒頭にでます
後編は「續青い山脈」のタイトルになっています
前編は1949年7月19日公開
後編は1週後の7月26日公開です
後編の冒頭には10分程度の前編のあらすじがあり東宝マークがでて改めて始まります
前編は93分、後編は83分ですから都合3時間もの超大作です
でも面白くて、演出もよくてダレもせずあっという間に観終えてしまいます
前編の主題歌はご存知超大ヒット曲「青い山脈」
後編の主題歌は「恋のアマリリス」
こちらは殆どの人が初めて聴く歌だと思います
原節子は29歳
当時の感覚だと既にオールドミスなのだと思いますが、もちろん若くて美しいです
梅太郎役の木暮実千代が彼女を初めて目にするシーンでこれは勝てないと一瞬で諦めるシーンが納得です
小津安二郎監督の「晩春」に出演するのは、本作の2ヵ月後のことになります
ラストシーンのプロポーズのシーンは心に残る名台詞です
「青い山脈」は1988年版以降はリメイクされていません
もはや現代性を持ち得なくなってしまったからだと思います
1988年版ですでに相当な無茶を重ねて映画に無理矢理したという印象です
本作公開から74年が経ちました
改めて民主主義がなんであるのかを映画にする意味なんかなくなっていて当然なのだと思います
そう思っていました
でも果たしてそうなのでしょうか?
LGBTへの差別発言で総理秘書官がすぐさま解任されたニュースがつい先日ありました
憲法には結婚は両性の合意によると書かれてあります
もし21世紀の「青い山脈」があるとしたら偽ラブレター事件は同性の間で巻き起こるのかも知れません
雪子先生と沼田先生も同性となるのかも知れません
民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います
そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います