青い山脈(1949)

劇場公開日:

解説

『若い人』『馬車物語』等の石坂洋次郎の原作を「「面影」の井手俊郎と今井正の協同脚色。「民衆の敵」「地下街二十四時間」の今井正が演出を担当する。カメラは「わが愛は山の彼方に」の中井朝一「春の饗宴」の池部良と「誘惑(1948)」「時の貞操」の原節子「面影」の龍崎一郎、新人杉葉子らが主演するほか若山セツ子、木暮実千代、飯野公子らが出演する。前篇。

1949年製作/91分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1949年7月19日

ストーリー

ある片田舎町の駅前。金物商丸十商店の店先に一人の女学生が「母が手元に現金がないからこれを町へ持って行って学用品を買いなさいって……」と小さく海光女学校五年生寺沢新子と書かれたリュックの米をつき出した。留守番の六助はドイツ語の教科書を放り出して大儀のついでに御飯を炊いてもらう。だんだん事情を聞いてみると母を二人もつ新子だった。一方英語教師島崎雪子は新子あてにきたラヴレターを見せられて、友達のいたずらだという彼女の言分に、何かしら尋常でない性格をつかみ、まして前の学校で転校を余儀なくされたこの娘に力になってやりたい衝動にかられる。そしてライ落な校医の沼田にこの問題を相談するが意外な答えだったのでついなぐってしまう。雪子は恋愛の問題を講義しつつ偽のラヴレター事件を直接生徒達に説いてゆく。しかし生徒達は「学校のために」やったといい、その理由として新子の行動を六助と結びつけて曲解した例をあげた。雪子は生徒達の旧い男女間の交際の考え方を是正しようと努力するが、それはますます生徒達の反感を買うばかりだった。教員仲間でも雪子の行動を苦々しく思い民主主義のはき違いなどといいつつ問題は次第に大きくなっていった。新子はそのうづ巻の中にあっても、高校生の六助や富永たちとつき合って行く。ついに学園の民主化を叫ぶ名目で新聞にまで拡がり、沼田も黙っていられず、雪子の協力者となるが、暴漢に襲われる。

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映画レビュー

4.0噂から恋が始まり、思い込みから因習が打破される。

2023年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1949年。今井正監督。東京から私立の女学校にやってきた女性教師はある日、クラスの生徒(東京からの転校生)にきた男性からの手紙が生徒のいたずらだとわかったことから、男女交際が悪いわけではなく、いらずらこそが卑劣であると厳しい口調で説諭。すると、学校の品位や伝統を重んじる大多数の女生徒から反発の声があがり、保護者や町の有力者を巻き込んで大騒動になっていく、、、という話。
都市と農村の対比を前提に、学校の品位や伝統という名の封建的な因習に真っ向から立ち向かう気骨ある女性教師が、徐々に仲間を増やしていくのは物語の定番。また、いたずらの背景に、実際に当該生徒が高等学校の男子生徒と異性交際になりかけている事実があるというのもミソで、まったくの捏造ではない思い込みから噂が生まれ、噂との関係で事実が出来上がっていく。最後にすべてが明らかになったとき、噂はどうなるか、思い込みはどうなるかという興味が物語を駆動する。これも定番。
高校生と女学生の関係、女性教師と地元医師との関係、大人の権力関係、女性たちの分裂、など話が大きくなるところまでで前篇は終了。うまくできている。
ちなみに、大柄でのびのびとした準主役といっていい杉葉子、元祖「眼鏡女子」というべき若山セツ子、凛としたたたずまいの飯野公子、真面目青年の伊豆肇といった東宝ニューフェイスの面々がたくさん出演している。

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3.5青春映画として有名だが、意外にも日本的なムラ社会との闘いが描かれている様に感じた

2023年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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共感した! 4件)
Kazu Ann

5.0民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います

2023年1月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

何度となくリメイクされた人気タイトルのオリジナルはこの今井正監督の1949年版です
日本映画のオールタイムベストにリストアップされているのも本作です

調べてみるとこうでした
本作を入れて都合5回の映画化です
つまり超人気コンテンツです

監督、雪子、沼田、新子、六助、配給

1949年版
今井正、原節子、龍崎一郎、杉葉子、池部良、東宝

1957年版
松林宗恵、司葉子、宝田明、雪村いづみ、久保明、東宝

1963年版
西河克己、芦川いづみ、二谷英明、吉永小百合、浜田光夫、日活

1975年版
河崎義祐、中野良子、村野武範、片平なぎさ、三浦友和、東宝

1988年版
斎藤耕一、柏原芳恵、舘ひろし、工藤夕貴、野々村真、松竹

さすがに東映版はないですねww

こうしてリスト化してみると、配役だけでそれぞれが本作のオリジナルをベースに、どこに焦点を当てて色付けして映画化しようとしたのかが伺えてきますね

原作は1947年6月から10月にかけて朝日新聞に連載された小説です
つまり新憲法が施行された翌月からの連載だったのです
戦後民主主義の教科書として当時大変な人気を博したそうです
その最初の映画化ですから、映画も大ヒットするのは当然でしょう
新憲法の精神を象徴する存在だったのだと思います

原作者の石坂洋次郎は弘前の生まれで、当地で女学校の教員であったので本作の女学校のモデルはそのときの記憶であろうとされているそうです

本作はこの原作を少しアレンジしながらも真っ正面から取り上げて、民主主義の日本をこれからこの若い世代が作り上げていくのだというメッセージに溢れています

本作は実は2部構成になっています
前編は本作で新子編と冒頭にでます
後編は「續青い山脈」のタイトルになっています
前編は1949年7月19日公開
後編は1週後の7月26日公開です
後編の冒頭には10分程度の前編のあらすじがあり東宝マークがでて改めて始まります
前編は93分、後編は83分ですから都合3時間もの超大作です

でも面白くて、演出もよくてダレもせずあっという間に観終えてしまいます

前編の主題歌はご存知超大ヒット曲「青い山脈」
後編の主題歌は「恋のアマリリス」
こちらは殆どの人が初めて聴く歌だと思います

原節子は29歳
当時の感覚だと既にオールドミスなのだと思いますが、もちろん若くて美しいです
梅太郎役の木暮実千代が彼女を初めて目にするシーンでこれは勝てないと一瞬で諦めるシーンが納得です

小津安二郎監督の「晩春」に出演するのは、本作の2ヵ月後のことになります

ラストシーンのプロポーズのシーンは心に残る名台詞です

「青い山脈」は1988年版以降はリメイクされていません
もはや現代性を持ち得なくなってしまったからだと思います
1988年版ですでに相当な無茶を重ねて映画に無理矢理したという印象です

本作公開から74年が経ちました
改めて民主主義がなんであるのかを映画にする意味なんかなくなっていて当然なのだと思います

そう思っていました
でも果たしてそうなのでしょうか?

LGBTへの差別発言で総理秘書官がすぐさま解任されたニュースがつい先日ありました

憲法には結婚は両性の合意によると書かれてあります
もし21世紀の「青い山脈」があるとしたら偽ラブレター事件は同性の間で巻き起こるのかも知れません
雪子先生と沼田先生も同性となるのかも知れません
民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います

そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います

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あき240

4.0民主主義の夜明け

2022年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

後4戦年目に公開された青春ドラマだが、当時の環境を考えると感慨深い。
旧態依然とした考え方と新しい時代の考え方が激突、守旧派は男性主体なのが面白い。
新子を杉葉子、島崎先生を原節子、芸者梅太郎を木暮実千代が演じている。

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共感した! 2件)
いやよセブン

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