受胎

劇場公開日:

解説

「懐しのブルース」に次ぐ久保光三の製作に、脚本は「若き日の血は燃えて」の清島長利、原作並びに監督は「飛び出したお嬢さん」の渋谷実、カメラは長岡博之で、台辞は殊に池田忠雄が担当する。新劇女優田村秋子の映画初出演に「懐しのブルース」の高峰三枝子「安城家の舞踏会」の森雅之「二連銃の鬼」につぐ宇佐美淳の共演の他「シミキンの拳闘王」の幾野道子「愉快な仲間(1947)」の村田知栄子、奈良真養、東野英治郎らが助演する。

1948年製作/82分/日本
配給:松竹・大船
劇場公開日:1948年4月6日

ストーリー

--世に母の愛情ほどやさしく強く崇高なものはない--長い間女手一つで育て上げたふさの長男浩一は恩師の令嬢敬子と結婚し、産婦人科医院を開業し、ふさのホッと一息したのも束の間だった。次男の雄二はふさの疎開中にすっかり手のつけられぬ不良青年となっていた。雄二はアパートに十も年上のダンサー千代子と同棲し、それにあき足らずレヴューガールのみさ子までも妊娠させていたのだ。それを知ったふさの悲しみ。雄二は何一つ希望のないその日その日を千代子によりかかり、だれた生活を続けていた。そのためみさ子の子供も、みさ子のよい父になってくれと頼むのをしり目に、堕胎させることにばかり窮余の策をねっていた。ふさはみさ子の純情を知り、嫁としてみさ子を迎えるためにヤミ屋の安田に千代子との別れ話を一任した。しかし安田の求めるものは人の幸福ではなく第一に己の懐を肥すことだったのだ。ふさは母の手でその問題を解決するために、祖先伝来の大切な仏像を安田の手に任せた。時価十万円の代物と知った安田はほくそ笑んだ。それを知った雄二はその仏像を取り返したい一心で格闘の末、ついに命と仏像を交換するような結果となってしまった。その臨終の際にすでに非を悟った雄二は、ふさにみさ子と赤ん坊を頼み、みさ子には--赤ん坊を正直で親切な子に育ててくれ--と頼むのだった。雄二はとてもいい子でした、私は決して泣きません、みさ子さん、雄二の言ったように生れてくる子を正直で親切な子に--とはげますふさの声はふるえていた。うららかな午後の陽ざしを浴びて田舎道を古びた馬車が行く。その中に幸福そうなふさのみさ子を護るようにした笑顔が見られた。

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