運命の暦
劇場公開日:1948年1月27日
解説
ラジオドラマ「雲の峰」金貝省三の原作を「絢爛たる復讐」以来の舟橋和郎が脚色「緑の小筐」についで島耕二がメガフォンをとり、カメラはコンビの相坂操一がそれぞれ担当する。「緑の小筐」につぐ相馬千恵子「いつの日か花咲かん」の小林桂樹、三條美紀の主演に、新人三國秀夫の他岡村文子(松竹)、美奈川麗子、比良多恵子らが出演する。
1948年製作/86分/日本
配給:大映・東京
劇場公開日:1948年1月27日
ストーリー
モーツァルトの夕の演奏会場でプリマドンナ三宅梢は突然ステージで卒倒した。梢の病気は、はっきりと七色の虹をみたという色彩感がある以上、ただの脳貧血ではなかった。医師園部の診断で脳腫瘍と判明したが直に手術しなければ生命に関わる程、じたいは切迫していたのだ。生命をかけてもとステージを望む梢に、園部は--死によって美を求めるような芸術には拍手を送る訳には行かない--と説得したものの手術半ばで中絶せざるを得なくなった。それ以上することは、梢の生命に関する問題であり、また中絶のままでも梢の生命は、あと一ヵ年という運命に直面していたのだ。園部は自責を感ずると同時に梢の一年という限られた人生を、少しでも幸福にしてやることを熱望していた。何も知らぬ家族のしゅうとうな注意のもとに過ぎていった。然し、園部の間断なき研究は続けられていった。--一年間の生命--園部の頭からは、この運命が絶えずさくそうして離れなかった。が遂に、その恐れていた梢の症状が現れたのだ。しかし何も知らぬはずの梢は、己の運命を知っていたのだ。そして、すべてに感謝しつつ園部に抱ようされたまま梢は息をひきとった。ベートーヴェンのピアノソナタ「パセティック」の楽譜が開かれていた。--と、このままでは余りに残酷な運命ではありませんか。作者は再手術の結果成功し、梢の生命をとりとめることが出来たことを附記しておきましょう--。