土曜夫人
劇場公開日:1948年1月6日
解説
「夜行列車の女」の土井逸雄と「二人で見る星」の須田鐘太の協同企画、織田作之助の原作を「おスミの持参金」の山崎謙太が脚色し、「夜行列車の女」「第二の抱擁」「今宵妻となりぬ」以来コンビの田中重雄監督、青島順一郎撮影。出演者は松竹から「情炎(1947)」の水戸光子、「かけ出し時代」「見たり聞いたりためしたり」の江川宇禮雄「女囚36号」「夜行列車の女」「東京の夜」の若原雅夫、「東京の夜」「素浪人罷通る」の平井岐代子の他片山明彦、鈴木美智子、吉川公一郎。
1948年製作/89分/日本
配給:大映・東京
劇場公開日:1948年1月6日
ストーリー
夜行列車のデッキの上から突き落されたヤミ屋、突き落した男はハッとしてそれを見つめる。これは大阪の青年実業家木文字章三だ。その章三の後から鋭い女の声、“木文字さん、これで貴方は私に何の要求もなさる資格が無くなったわけね、殺人犯”これを聞くと章三は激情的にその女に抱きついて行く。すると若い与太者らしいのがその間を分けようとして章三に組みつく。二人は組み合ったまま列車から転げ落ちる。呆然と後に残った女中瀬古陽子である。一体これはどういう事なのだ。話は遡らなければならない。終戦のどさくさ紛れ、大ヤミで一挙巨万の富を築きあげた木文字章三。金で動かないものはこの世にない。老政治家中瀬古に政活資金を惜しみなく注ぎ込むというのも政治向に顔を利かしたいだけが目的ではなく、美しい娘陽子を手に入れたいのが本心なのだ。だが陽子はこの新興成金につばをかきかけたい程いやだ。この男別にチャンと料理屋のマダム貴子という女がいる。にもかかわらず家を出てキャバレーのダンサーとして働く陽子をしつこく狙う。ある日陽子の踊っている姿をパチリと写した男がいる。グラフキャメラマンの木崎三郎だ。彼女は憤ってフィルムを取り返しに行くと木崎のアパートには彼女とそっくりな写真が飾ってあった。亡妻なのだ。彼女は何か胸もつかれながらフィルムを取り返せないまま帰った。陽子をひそかに思っている男に与太者京吉という美青年がいる。乗竹侯爵も陽子に目を付けていた彼女を貴子が経営する料理屋田村に誘い込んで失敗するが、変わりに貴子の気のあるところをキャッチする。陽子は危いところで乗竹の手を逃れたが章三の追求は激しかった。彼女はたまらず総てを捨て東京行の汽車に乗り込んだ。ところが同じ列車に章三も京吉も、それから乗竹や貴子も乗っていたのである。章三と京吉は組み合って転落した。何もかも目茶苦茶、陽子は急に引き返し、忘れられない人木崎のアパートに走り込んだのである。