ぼんぼん(1947)
劇場公開日:1947年11月21日
解説
「誰か夢なき」に次ぐ新東宝作品(新演伎座提携)で、製作は「誰か夢なき」の武山政信。原作は劇壇の北条秀司で「地下街二十四時間」「戦争と平和」「浮世も天国」「春の目ざめ」(成瀬巳喜男と共同)の八住利雄が脚色し「陽気な女」「幸運の仲間」の佐伯清が「かけ出し時代」に次いで演出する。クランクは「民衆の敵」「かけ出し時代」の鈴木博が担当。主演は「霧の夜ばなし」「大江戸の鬼」の長谷川一夫と「霧の夜ばなし」「今日は踊って」「新婚リーグ戦」(松竹大船)の山根寿子「大江戸の鬼」「誰か夢なき」の黒川弥太郎「新馬鹿時代」の花井蘭子、新生新派の小堀誠、村田正雄らが共演する。
1947年製作/88分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1947年11月21日
ストーリー
ころは大正十三年、京都四條の京紅問屋「べに福」のせがれ彌太郎は学校出たての明るい新しい思想を持った青年で、皆から「ぼんぼん」と呼ばれている。父福右衛門は昔通りの問屋の店を名実ともに続けたいと思っているため彌太郎と意見が合わない。店の源吉は女中お春と出来、店を出される。源吉は古い思想の福右衛門を恨み、手代たちに働く者の正当な要求をしろとけしかける。気の弱い、そして福右衛門の妻おくらに拾われた庄吉は苦しい思いをして働かせられても仕方ないと思っている。庄吉は今脚気で苦しんでいる。これを何くれと面倒見るのは彌太郎と女中のお米である。その頃、伏見屋の娘敦子との縁談が父母の間にもち上るが彌太郎はそれを断り、返って女中お米を嫁にもらいたいと言って父母を驚かす。彌太郎の話を聞いたお米は驚いたが、彌太郎は一人で承知してしまう。お米は実は庄吉と言い交わしている仲で、このことを知った庄吉は驚ろくが、自分は主家に義理ある人間だからと、病気を口実に田舎へ帰る決心をする。一方店の手代たちはついに待遇改善要求を福右衛門の前に出した。福右衛門は「みんな出ていけ!」とどなるが何か新しい思想をひたひたと感じる。お米は彌太郎からかんざしを買って貰ったとき、思いきって庄吉と約束のあることを打明ける。彌太郎はハッと思うが生来の明るい性質は、お米と気の弱い庄吉を元気づけ二人の手を結ばせる。だが彌太郎は何かしら寂りょうを感じ、父福右衛門と祭で泊りに来ている伯父市松がおきゅうをすえに出かけた空也堂へ行く。背中にもぐさを乗せている父の前で彌太郎が、新しい時代の流れを話す。父は彌太郎の心を知って「お前の思う存分に……そして今日からお前はぼんぼんではない」と言う。彌太郎はお米を嫁にと言ったことも取消す。自転車で帰る彌太郎は途中で会った敦子を乗せて日を浴びていく。敦子がそうっと日傘をさしかけている。