お役者鮫

劇場公開日:

解説

「情炎(1959)」の衣笠貞之助と「お嬢吉三」の犬塚稔の共同脚本を、「山田長政 王者の剣」の加戸敏が監督したもので、歌舞伎の世界を背景にした怪奇時代劇。撮影は「四谷怪談(1959)」の牧田行正。

1959年製作/78分/日本
劇場公開日:1959年8月29日

ストーリー

河原崎座の舞台は初日を明日に控えていた。狂言作者竹柴瓶作、座頭の市川仙翁、鳴海屋の一統扇十郎、扇之助らが顔を揃えて舞台稽古に余念がない。仙翁は、扇之助のセリフ回しが気に入らず、弟扇四郎に代役を命じた。扇之助は席を蹴った。--瓶作は芸者鶴代に執心だった。だが、鶴代は扇之助と将来を言い交わした仲なのだ。鶴代は扇之助からの呼出し状を受取った。第六天神裏、扇之助から芸者をやめて一緒になってくれと言われた。扇之助が彼女を引き寄せようとした時、鶴代の下駄の鼻緒が切れた。代りの履物をと扇之助は消えた。が、戻った時には鶴代の姿はなかった。--舞台では「先代萩」の幕が開き扇十郎が中村富右衛門を相手に熱演していた。その舞台裏へ駈けつけたのは、扇十郎に惚れている芸者の小浜だった。舞台から下りて来た扇十郎に、鶴代が殺され、下手人として扇之助の名が挙げられていることを伝えた。その頃、扇之助は友人の巳之吉の家に現れ、そこで鶴代が殺され、自分が下手人と見られていることを知った。扇之助は小浜の家へ駈けつけた。扇十郎がいた。兄弟が激しく言いあっているところへ、目明しの久五郎が現われ、扇之助を引き立てて行った。扇十郎は真犯人を見つけようと走り廻った。花川戸附近を小浜と共に歩いている時、鰻掻きの留五郎と出会った。扇子をちらつかせながら、五十両出せという。その扇子は鶴代の死体の側から拾ったもので、三桝の扇の紋がある。金の折り合いがつかず、留五郎は姿を消した。留五郎の家は瓶作の家の隣りだ。この扇子を瓶作に見せびらかした。瓶作の顔色が変った。翌日、留五郎の死体が堀割りに上った。現場に来た目明しのお弓は、扇子を見つけ懐ろにしまった。河原崎座の舞台。扇十郎が花道へ上ろうとした時、その綱が切れ、危うく奈落へ叩き落されそうになった。巳之吉が、扇之助が伝馬町送りになるという知らせを持って来た。巳之吉は、ふと舞台の異常さを見つけ、葡萄棚へよじ上った。道具方の谷蔵が、扇十郎めがけて匕首を投げようとした。二人がもみあううち、谷蔵は転落して死んだ。翌朝、瓶作の「置土産桔梗小紋」の本読みが行われた。扇十郎は瓶作に迫った。証拠の品として例の扇子をつき出しながら。扇十郎の人気をねたんだ中村富右衛門と、鶴代にふられた腹いせに殺してしまった瓶作が仕組んだ芝居だったのだ。--扇之助を迎えた河原崎座の舞台は沸いた。

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