太陽に背く者
劇場公開日:1959年6月21日
解説
樫原一郎の原作を、浅野辰雄・関沢新一・瀬川昌治の三人が脚色したもので、五番町事件を背景に下積みの刑事を主人公とした社会的なホームドラマ。「呪いの笛」の酒井辰雄が監督し、「修羅桜」の倉持友一が撮影した。
1959年製作/100分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1959年6月21日
ストーリー
昭和三十年クリスマスの夜、京都市西陣五番町のバー「有明」で喧嘩があった。男は不良の大下、逃げる相手は白トックリの人物だった。白トックリを追って外に出た大下は健、浜野、原田、山口という愚連隊の四人組にからまれ近くの暗闇で刺し殺された。「有明」のマダム、客の森川らの証言で四人組は大下殺害の容疑で捕えられた。市川、土屋、徳永の三刑事が取調べに当った。犯行を否定しつづけていた健が突然自供した。しかし奇妙なことに凶器が出て来ない。その上、健は日に二度も三度も自供を変えるので、三刑事は無益な苦労をつづけた。新しい年が明け事件は急転した。健の義父が凶器のナイフを届出たのである。四人の公判が開かれた。「わしは刺しゃせん、うそや、刺したのは白トックリや」……健は絶叫した。市川刑事は信じた。土屋、徳永両刑事と協力して、自費で白トックリの捜査をつづけた。しかし自腹まで切って苦労する三人の家庭は風波が絶えなかった。森川が事件当夜の事実を知らせた頃には、当の白トックリはすでに捕えられていた。三人は呆然とした。佐藤即ち白トックリの話はこうだった。--あの夜大下を追って来た健ら四人組の一団を見た佐藤は大下が乾分をつれて自分を追って来たものと勘違いして、出会った大下の腹にナイフを突きさして隠れていた。即ち四人組が暴力を振う以前に大下はすでに虫の息だったのである--。捜査陣の黒星だった。事件は全国的に広がり、事件を担当した三刑事に寄せる風あたりは強かった。釈放された健が腹いせに云いふらす出鱈目な発言にも耐えるしかなかった。折から傷害犯人が近くの学校内に逃げ込んだ。現場に急行した市川刑事は殉職した。市川が土屋に言い残したのは健の将来であった。