母しぐれ

解説

「浅間の暴れん坊」の村松道平の脚本を、新人第一回の和田篤人が監督した母もの映画。撮影は飯村雅彦。

1959年製作/日本

ストーリー

伊豆の料理屋ひさごで身をすりへらして働く節子には、小学生のユリ子という娘があった。隣家のおさえや、その息子政也、女将のおしげ、板前の信さん等の愛情につつまれて、貧しくとも二人は幸福だった。ある日、節子は街を行く高級車の中に岸野ユキ江を見出して驚いた。ユキ江は、この町に乗出そうと選挙準備に忙しい夫の剛三郎に呼ばれ、東京から来たのだった。植木屋の植富の紹介で、昔節子はユキ江の生家に傭われていたことがあった。ユキ江には親に隠した恋人があり、彼の子まで宿していたが、彼は戦死してしまった。ユキ江の将来を心配した父親は、生れた子を、丁度子を死なして悲しんでいた節子に託した。それが今のユリ子なのだ。友達とサイクリングに出かけたユリ子は、灯台見物をしていたユキ江と話しあった。何も知らぬユリ子を、わが子と気づいたユキ江は激しく動揺した。そして、ある日節子を訪ねて、ユリ子を引取ることを申し出た。夫の剛三郎も、選挙の人気とりの一つとして、秘書望月やボスの田川一味を使って、節子をせめつけた。ユリ子の将来を考えて、渡辺先生のすすめもあり、節子は彼女をユキ江に渡した。しかし、ピアノやテレビに囲まれた豪華な生活を送りながら、ユリ子は少しも幸福ではなかった。育ての母を慕うユリ子は東京に行ったと聞かされた節子のもとに行こうと、一人夜の線路づたいに歩きした。それを知ったユキ江と節子は急いで後を追う。ユリ子が鉄橋にさしかかった時、列車が驀進してきた。思わず絶叫したユキ江の目に、列車通過後のもうもうたる煙の中に、ひしと抱き合うユリ子と節子の姿がうつった。やがて、暖い海岸で、みんなに祝福されるユリ子と節子をあとに、ある日、ユキ江は一人東京に発っていった。伊豆の山々には、もう春がおとずれてきていた。

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