嵐を呼ぶ男(1957)のレビュー・感想・評価
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【”自らを認めてくれない母に対する屈託をドラムに叩きつける男。”邦画名シーンである右手でドラミングしながら唄う姿と共に、最後の最後に母と涙を流し和解する姿も良き作品である。】
■流しのギター弾き・正一(石原裕次郎)は、銀座で評判の暴れん坊。
そんな兄のため、弟の英次はジャズ・バンドのマネージャーの美弥子(北原三枝)に正一を紹介する。
こうしてジャス・ドラマーを目指すことになった正一は、猛特訓を重ねる中で、徐々に美弥子と引かれあっていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・多分、不惑以上の映画好きの方は一度は観た事がある映画かも知れないが、正直に書くと恥ずかしながら初鑑賞である。だって、年代的に違うもん。
・ストーリーとしては分かりやすいし、故、石原さんの当時としては日本人離れした長身を駆使したドラミングも魅力的である。
■映画からは離れるが、随分前に読んだ記事で、石原さんが早逝された際に最後まで付き添ったのが、今作で共演し、その後結婚された北原三枝さんだそうである。
映画共演を契機に結婚した男女スターは多数居るが、50代後半で早逝された石原さんを見送り、その後北原三枝さんは、独身を貫いている。稀な事であると思う。
今でも覚えているのだが、病魔に侵された石原さんが排泄していたのは、北原三枝さんの掌だったそうである。
微かな記憶なので違ったら申し訳ないが、石原さんは”三枝でないと出ないんだよ。”と仰った記憶がある。
凄い夫婦愛である。
・石原さんが演じる正一がドラマーとして、一世を風靡するも認めない母。だが、弟は喧嘩でドラマーになれなくなった兄の意志を引き継ぎ、見事にコンサートマスターになるのである。
弟が指揮する曲を行きつけのバーでそれを聞く正一の姿。
そこに現れた母が、正一にそれまでの言動を詫びるシーンは矢張り沁みるのである。
<石原裕次郎さんは、年代的に躍動感あるお姿を見た事が無いのであるが、この方を信奉する方が多いのが十二分に分かる気がする作品である。>
新しいヒーロー誕生の熱気、そして興味深い渡辺プロ誕生時の物語
井上梅次原作・脚本・監督による1957年製作(100分)の日本映画。
原題:The Stormy Man、配給:日活。
やはり、前日にライバルの仲間に左手を痛めつけられてドラムが遂に叩けなくなった石原裕次郎が、少し間を置いて「オイラはドラマー」と左手でドラム叩きながら歌を歌い出すシーンは逆転性もあってなかなかの設定。爽快感もあった。
北原三枝のマネージャーと裕次郎のドラマーの関係は、 1956年に渡辺プロダクションを興した渡辺美佐(当時は曲直瀬)とベーシストの渡辺晋の関係をモデルにしたとか。
しょっぱなのシーンで、後に歌手として更に作曲家として活躍する平尾昌晃が歌っていた。ジャズ喫茶で歌っていところを渡辺美佐と井上監督に見そめられたとか。この映画のストーリーみたいだ。
裕次郎演ずる主人公国分正一が、北原三枝との仲取り持つからと、金子信雄演ずるジャズ評論家に自分の売り込みを持ちかけていたのが、興味深かった。決して正義感溢れる若者ではなく、売れるためには、際どいことも平気でするというキャラクター設定なのかと!あと、ジャズ界で売れるには、実力以上に評論家の後押しが重要との認識を、この映画では堂々とうち出していたのも、少々驚ろかされた。まあ、事実なんだろうけど。
また、いい年をした主人公裕次郎が、母親に自分がしていることを評価してもらえないと不貞腐れていたのにも、自分的には随分と驚かされた。エデンの東(1955)のジェームズ・ディーンみたいに親離れ出来ない主人公が、当時の流行りだったのか?
チャーリー・桜田役は紅白歌合戦8回出場ののジャズ歌手笈田敏夫。裕次郎のドラムの吹き替えは時代の寵児だった白木秀雄が担当。彼、渡辺プロに所属もわがままのせいか解雇され、1972年孤独死。映画のチャーリー役をまるで地でいっている様。チャーリーのドラム演奏は重鎮ドラマーとなる猪俣猛。裕次郎のドラム指導は当時のジャズブームの火付け役ジョージ川口で、留置場のワンシーンでジャズマンでもあったフランキー堺も出演と、当時の有名ドラマー多くが関与とか。
まあ映画自体はそれ程のものとは思えないが、何と言うか、新たなヒーロー誕生の熱気の様なものは、感じさせられた。また芸能マネジメントの激しい競争や暴力との絡み等、胡散臭さも垣間見れて、とても興味深くもあった。
監督井上梅次、脚色井上梅次、西島大、原作井上梅次、製作児井英生、撮影岩佐一泉、
美術中村公彦、音楽大森盛太郎、録音福島信雅、照明藤林甲、編集鈴木晃。
出演
石原裕次郎国分正一、青山恭二国分英次、小夜福子国分貞代、北原三枝福島美弥子、岡田眞澄福島慎介、高野由美福島愛子、芦川いづみ島みどり、山田禅二島善三、天路圭子有馬時子、白木万理メリー・丘、笈田敏夫チャーリー・桜田、金子信雄左京徹、市村俊幸持永、冬木京三種田、高品格健、峰三平乾分A、榎木兵衛乾分B、光沢でんすけ乾分C、八代康二乾分D、三島謙マネージャー滝、木戸新太郎バーテン矢野、寺尾克彦バーテン、柳瀬志郎吉田、二階堂郁夫長谷、林茂朗木村、加藤博司、汐見洋大熊教授、早川十志子福島邸の婆や早
、竹内洋子バーの女、小柴隆凡太郎、坂井一郎ボーイ、紀原耕留置所の警官、衣笠一夫浮浪者、阿井喬子テレビの女アナ、東郷秀美テレビのフロマネ。
ドラムソロが目玉
タイトル通り嵐みたいな主人公。なぜそんなに気が短い。湧き上がる衝動を、ドラムに、ケンカに、叩き込む。でも、母親に冷たくされて悩んでるなんて、予想外にかわいい。手が痛くて演奏できないから、とっさに歌っちゃうシーンは、裕次郎の魅力が爆発だ!
あと、ダンサーの踊りがおもしろい。独特な振付。当時は腹と脚が出てる衣装なんて、相当攻めていたのでは。女豹のようだった。
BS日テレにて。
オイラはドラマー
2020年9月13日
映画 #嵐を呼ぶ男 (1957年)鑑賞
#石原裕次郎 の代表作
今まで見たことなかったのて初めて見た
裕ちゃんの魅力全開って感じの作品でした
ただ、新人ジャズドラマーのことがテレビで取り上げられることはないと思うけどね
まるで洋画を観ているような世界観で撮られていて、それが破綻してないんです
こりゃ、スゴイ!驚いた!
この当時でこのクォリティー!
単に♪おいらはドラマ~だけの映画じゃありません
冒頭のロカビリーのステージは平尾昌晃です
カッコイいたらありゃしない
バンドもイカしてる
お目当てのドラム合戦は中盤にあるのですが、その裕次郎の主題歌シーンよりも、ダンサーのお姉さん方の衣装とその美術セットに目が釘付けです
MGM のミュージカル映画好きなら、一目で分かるはず
1936年公開の巨星ジークフェルドのあの超有名な巨大デコレーションケーキのシーンの超ミニミニ版です
ニヤリとして、嬉しくなってしまいます
クライマックスの大人数でのフルオーケストラシーンも素晴らしい!
これ1955年のヒッチコックの映画「知りすぎていた男」のオマージュです
これも一目で分かります
あれほどドラマチックな曲ではないですが、結構長い演奏シーンで、なかなかのオーケストレーションです
銀座のクラブ、バー、ミワの屋敷の内装
1周どころか、5周ぐらい回って21世紀の現代でも全く古臭くないのです、却って素敵なんです
衣装も垢抜けています
会話も小粋
まるで洋画を観ているような世界観で撮られていて、それが破綻してないんです
裕次郎の母親役が和服を着ていたりしてでもです
まだ少年のような面影が残っていて、正に裕次郎の魅力が爆発しています
若い女優陣もみんな現代的で自由です
空気がカラッとして明るいんです
全く1957年昭和32年の作品とは到底思えないレベルです
照明と撮影もいい仕事していて見やすいいい絵が撮れています
印象は「興奮して愉快で、幸せな気分で〆。」
石原裕次郎さんが演じる“お兄ちゃん”はとてもあたたかい。
同時に、お芝居だとわかって観ていても、ハラハラしてしまう、次の行動に予測がつかないようなエネルギーに溢れていて、驚く。
時代設定を今にして創った、この映画を観てみたいなぁと思った。
ショーちゃん役は誰が?て、なるだろうけれど。
嵐を呼んだ男、石原裕次郎
ヤクザな性格ながら確かな腕を持つドラマー・国分正一。ジャズバーの女マネージャー・美弥子に見出され、メキメキと頭角を現し、スターダムにのし上がるが…。
役柄同様、石原裕次郎を一躍スターダムに押し上げた出世作。
見事なドラムさばきや歌も披露、ヒロインとのロマンス、格好いい男の体現…石原裕次郎の為に用意されたスター映画なのは確かだが、後に日活が量産するキザっぽい映画とはちょっと違う。
母親の愛に恵まれず、非行を繰り返す正一。
真面目な弟をも音楽の世界に引きずり込んだ正一を憎んでさえいる母。
型破りな正一に惹かれていく美弥子。
美弥子に横恋慕し、正一と美弥子の関係を妬む腹黒ジャズ評論家・左京。
人気の座を奪われた陰湿なライバルドラマー。
登場人物たちの愛憎が交錯する。
正一と母親の確執のドラマは、物語の根底と言っていい。
母親を見返す為、日本一のドラマーになる事を決意する正一。
遂にその夢は実現するが…それでも母は喜んでくれなかった。
正一と美弥子の関係を妬む左京が、作曲家としての道が開き始めた正一の弟を妨害しようとする。
弟を守る為、正一は身を犠牲にする。ドラマーの命でもある腕も潰される。
その事を知った母は後悔し、初めて正一への愛情が沸く。
正一の弟のコンサート曲をバックに、全ての確執やわだかまりが解けた母子愛の喜びは、正一が最後に見せた涙が物語る。
ただ主人公が活躍してヒロインと結ばれる…というありがちな話ではなく、主人公の哀切をしっかり描き、予定調和ながらツボを抑えた作りは好感。
話もテンポ良く、まるでアクション映画を見たような痛快さと爽快さがある。
この作品の大ヒットにより、スターとして日本映画界を牽引していく事になる石原裕次郎。
文字通り、日本映画界に“嵐を呼んだ”のだ。
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