愛情
劇場公開日:1956年4月22日
解説
石坂洋次郎の小説を「ただひとりの人」の共同脚色者の一人、池田一朗が脚色し、「母なき子」の堀池清が監督、「逢いたかったぜ」の高村倉太郎が撮影を担当した。主なる出演者は、「赤ちゃん特急」の浅丘ルリ子、「青春をわれらに」の坪内美詠子、「銀心中」の長門裕之、「いろは囃子」の山根寿子、「神阪四郎の犯罪」の金子信雄、清水将夫など。
1956年製作/96分/日本
原題または英題:Lovers
配給:日活
劇場公開日:1956年4月22日
ストーリー
東北のある温泉町。一高の入学試験勉強に来ていた野上太郎は湯治に来ている松山浜子を知った。浜子の姉の信子は若い二人を結びつけようとして画策した。宿の女中達は毎晩勉強していた太郎が浜子達とトランプ遊びに興じる姿を見ておどろいた。太郎が風呂に入っていると信子にそそのかされて意地になった浜子が飛びこんで来た。太郎は出るに出られず湯にのぼせて失神した。信子の夫圭吾がやって来た。信子は太郎の部屋に浜子を泊らせた。浜子は不眠の一夜を明かし、太郎が眠っている間に部屋を出た。眼をさました太郎は浜子の枕の匂いをそっとかぐのだった。やがて二人はお互いの愛情を告白しあい、太郎はもっと勉強することを浜子に約束するのだった。梅林で抱きあっている二人を見た信子は嫉妬の心を燃やした。近所に火事のあった夜、庭へ出た浜子は、おくれて出て来た太郎に「お浜ちゃん!」と囁かれて頬を上気させた。信子は嫉妬のあまり浜子を温泉場から引きあげさせることにした。最後の夜、信子は傷心の浜子を太郎の部屋に泊らせた。夜中、浜子は太郎に抱きしめられて目を覚した。太郎を必死に避ける浜子は、「浜ちゃんだって、火事の前に僕のところに来たじゃないか」といわれて愕然とした。部屋を飛び出した浜子は火事の夜、太郎の部屋に行ったのは信子であることを知った。浜子達の出発の朝、見送り人の中に太郎の姿がなく、部屋の机の上に別れの言葉を記したノートがおいてあった。太郎は思い出の梅林で自殺した。二十年たち、この事件を知る画家成田はその温泉場を訪れ、今もなお昔の面影を残す浜子と当時を語りあった。