父と子と母
劇場公開日:1956年2月26日
解説
岸生朗、本山大生、井上和男の三人の共同脚本を新人井上和男が監督、谷口政勝が撮影を担当した。主なる出演者は、「元祿美少年記」の北沢彪、「虹いくたび」の滝花久子、「二等兵物語」の幾野道子、SKD出身の故里弥生、「四人の誓い」の山内明など。
1956年製作/48分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1956年2月26日
ストーリー
画家藤川行道の個展が京都のある百貨店で開かれ盛況であった。その百貨店に働く彼の娘の泉は電気洗濯機を買って帰ることを父に約束させた。その夜家で母の志津を交えた一家はささやかな御馳走を作って父の帰りを待っていたが、行道は泥酔して帰って来た。翌日、電気洗濯機の代りに植木屋が羅漢の石像を運んで来た。泉は妻や家のことを考えない父に腹を立て、恋人の原田隆の下宿を訪れた。原田は絵を勉強している青年で以前、泉との結婚を直接行道に話して断わられていた。彼はその理由を、自分が経済的自立をしていないからだと解し、仕事を探していた。彼は泉に就職が決まったらもう一度話しに行くというのだった。泉はその日会社を休んで大阪にいる姉の志摩子をたずねた。志摩子は泉の恋愛に共鳴し、根気よく父の理解を得るように忠告した。数日後隆の就職が決まり、彼は藤川家を訪れて泉のことをきり出したが、またしても行道に断わられた。志津も初めて夫に逆って泉の味方をした。行道はぷいと家を出、行きつけの酒場で酒をあおりながら、「出来そこないの絵描きに娘はやれん」といい、苦労をかけている妻の志津のことを思い浮べた。その頃、家では、体の弱かった志津が突然の発作で死んだ。葬儀をすました夜、行道の注文した洗濯機が届いた。だがもうおそい。この機械を一番必要とした志津は死んでしまったのだ。逝った人の面影を偲びながら、藤川家では父と子供達があらためて温い心を交すのだった。