乳房よ永遠なれ

劇場公開日:

解説

若月彰、中城ふみ子の原作を「心に花の咲く日まで」の共同脚色者の一人田中澄江が脚色し、「月は上りぬ」の田中絹代が監督、「こころ」の藤岡粂信が撮影を担当する。主なる出演者は「自分の穴の中で」の月丘夢路、「こころ」の森雅之、「志津野一平 愛欲と銃弾」の大坂志郎、「くちづけ(1955)」第一話の杉葉子、「王将一代」の田中絹代、「少年死刑囚」の木室郁子、新人葉山良二(二十八年度ミスター平凡)など。

1955年製作/110分/日本
原題または英題:Forever In Love
配給:日活
劇場公開日:1955年11月23日

ストーリー

安西茂との不幸な結婚生活に終止符をうったふみ子は、二児を抱えて実家に戻った。たまたま、ふみ子とは幼友達のきぬ子の良人森卓が外地から引揚げて来たのを機に、北海タイムスの山上家では短歌のつどいが催され、勧められるままに何首かを詠んだふみ子は絶讃を浴びた。その夜、見送りの途すがら、森のかけた激励の言葉は、ふみ子の心に明るい灯をともした。ある日、仲人の杉本夫人が来て、離婚手続の済んだことを知らせたが、長男の昇だけは良人の許に帰さなければならなかった。そんなある日、森が急病で死んだ。泣くにも泣けない気持でふみ子は森の写真を見つめるのだった。安西家からこっそり昇をつれ戻し、親子水入いらずで東京に職を見つけようとしたふみ子は、乳癌で札幌病院に入院した。先頃「短歌時代」に新人作家の募集があった時、森によって送られた彼女の短歌が入選し、歌壇の話題となっていることを東京日報の大月からの便りで知った山上が病院に駈けつけたのは、彼女のみずみずしい乳房が切りとられる日であった。手術後、ふみ子は元気だったが、ある日、同室の患者の新聞に自分の余命いくばくもないと記されているのを見て愕然とした。そして勝気な彼女はことさらに元気を装い、東京から来た大月に求婚したり、無暴な振舞が多かった。大月が社に呼び戻された数日後、この若き閨秀歌人の遺体も屍室に運ばれたのだった。初夏の緑が映える一日、支忽湖のほとりに昇やあい子と立った大月は、ふみ子のノートを、子供たちは手にしたリラの花を湖面に投げるのだった。

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映画レビュー

5.0名作

2022年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

大変な傑作だった。望まぬ結婚を強いられ、実家に戻り歌会に参加した女性が、短歌に込めた悲哀。そしてやがて乳がんとなるが、歌が認められ、新聞に掲載され、東京からきた若い新聞記者と出会う。彼女の生活は抑圧の中にあったが、乳がんとなってから、人生を取り戻すかのように自由奔放となっていく。しかし、それは死の恐怖と隣り合わせで、自暴自棄にも見える。この二重性が強烈に映画を奥深いものにしている。
主人公の病室の窓から見える中庭に縦に伸びる廊下が見える。向かいの病棟には遺体安置所がある。死への一本道を象徴するようなこの廊下の不気味さが画面に緊張感をもたらし、物語の中でも効果的に用いられている。
手鏡ごしに目があう主人公と男性の目が合うショットは大変に印象的で、田中絹代は相当に力の映画作家だなと思った。乳房と言う女性を象徴するものを無くしてから、主人公はむしろ女性として、人として開花していく。その構造自体で、女性に向けられた苦難を描き出す。すごい映画だ。

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杉本穂高

5.0唯一残しうる死を子等よ受け取れ

2024年4月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

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しゅうへい

4.0昭和女の悲劇。 意に沿わぬ結婚。夫の浮気。女手での子育て。そして乳...

2023年11月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

昭和女の悲劇。
意に沿わぬ結婚。夫の浮気。女手での子育て。そして乳がん。女性にとってはまだまだ生きづらい時代だったんでしょうね。
女性の手による女性の映画。なんとも重いものを感じる。最後の恋は幸せだったのでしょうか。

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はむひろみ

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