劇場公開日 1966年12月3日

「皮肉な運命」五泊六日 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5皮肉な運命

2020年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 東宝を離れた二枚目スター池辺良が池辺プロダクションを設立し、東映での映画を作り、東宝のような明るい作風を持ち込んだ。本作でもチョイ役で出演してるが、やっぱり素敵な万年青年。

 紀州への新婚旅行に出かけた大原彰(川崎敬三)と知英子(磯野洋子)。同じコースの新婚旅行カップルがいて、新婦が彰を振った久美(緑魔子)だったことが発覚する。必死の思いでのプロポーズだったのに、彼女は財力も比べ物にならない久米産業社長の次男坊・庄三郎を選んだのだ。彰と久美の二人だけの秘密だった失恋が再び愛を燃え上がらせて、やがて不倫へと発展しそうになるが・・・といった展開。

 単なる艶笑コメディなのかと思っていたら、最後に凄い展開が待っていた。不倫という言葉が流行りだしたのは80年代だし、この頃は普通に「浮気」と言ってた。また、新妻の処女性などのテーマもあったりで、時代を映し出しているかのような内容。

 東京から五泊六日の新婚旅行の一泊目が大阪であることにも新幹線がまだ開通していない時代を感じさせる。新婚初夜の二組のそれぞれの思いもニヤニヤしてしまいがちで、一方が玉の輿に乗るだけの政略結婚だったため、愛情の再燃というラブロマンスも描かれている。全体的には紀州の観光映画。JTBのロゴが変わってないことにもビックリ(社名は日本交通公社だが)。

 山部赤人の句「若の浦」や、うねりとさざ波の違いなどのウンチクとともに、普通のサラリーマンとボンボンの金の使い方の違いなど、面白さはけっこうある。緑魔子のコケティッシュな雰囲気や磯野洋子の知的な美しさも見どころの一つ。意外なちょい役として佐藤蛾次郎がいたことにもビックリ。外でするなよ・・・的な。

 終盤には二年後に偶然出会った彰と久美のエピソードが登場するが、皮肉なことに久美の家庭は驚くべき凋落ぶりを見せてくれた。ぜんぜん喜劇じゃないやん!

kossy