慈悲心鳥
劇場公開日:1954年11月15日
解説
菊池寛の原作を「継母」の館岡謙之助が松山広行と共同で脚色し背景を現代に移している。監督と撮影は共に「トラン・ブーラン 月の光」の松林宗恵、西垣六郎がそれぞれ当っている。出演者は「黒い罌粟」の角梨枝子、「恋風街道」の中山昭二、「近松物語」の香川京子、民芸の波多野憲のほか、和田孝、邦千代子、宇野重吉、斎藤達雄、高田稔など。
1954年製作/96分/日本
劇場公開日:1954年11月15日
ストーリー
親友同志である河井竜太郎と篠原俊輔は共に駒居静子を愛していた。静子の両親は、何かと世話をしている力行型の秀才である竜太郎より、新興財閥の金融経済会の御曹子である俊輔の方に惹かれていたが、静子は竜太郎を愛していた。竜太郎は頼みの綱であった司法試験の日に猛勉強の過労の為に倒れ、見舞に来た静子に一年待つことを頼んだが、駒居代議士の当選と共に静子と俊輔の結婚は急速に実現された。数年後、静子は俊輔の強い愛情によって幸福な家庭を得、洋一という子供も生れた。また竜太郎は試験に合格し、検事に任官して地方にいた。一時は金融界の王座にあった金融経済会も経営の危機におち、事態収拾のために政界の汚職事件に関係した。検察当局の眼を潜り、俊輔は奔走したが、銀行、金融会社から融資停止の報を受け、会社は破産の寸前に至った。或る朝検察当局が家宅捜査に来た時、金融経済会捜査の応援検事として上京していた竜太郎が指揮をしていた。冷酷な竜太郎の態度に静子と俊輔は憎悪の情を抱いたが、職務に忠実な竜太郎には他意はなかった。自責と侮辱に耐えかねて俊輔は自殺し、金融経済会は破産した。俊輔の初七日の日に、墓前で静子に会った竜太郎は苦衷を述べたが、竜太郎を誤解する静子は彼の残酷さをなじった。亡夫の愛情を求めて静子は死を願い、洋一をつれて家出をしたが、死ねなかった。疑獄事件も一段落つき、竜太郎は秘かに静子母子の養育費を友人の手に託し、任地へ帰って行った。