かくて夢あり
劇場公開日:1954年6月29日
解説
日活の製作再開による第一回作品。NHK連続放送劇の映画化で、大林清の原作を「サラリーマンの歌」の猪俣勝人と「水色のワルツ」の小森静男が共同脚色し、「今宵ひと夜を」の千葉泰樹が監督している。撮影は「無法者」の峰重義。出演者は「坊っちゃん社員 前篇」の小林桂樹、「魔子恐るべし」の伊豆肇、「美しい人」の宮城野由美子、「近世名勝負物語 黄金街の覇者」の島崎雪子などである。
1954年製作/105分/日本
配給:日活
劇場公開日:1954年6月29日
ストーリー
義文は銀座の酒場でピアノ弾きをしながら、弁護士の勉強をしていた。兄利光は水戸近郊に親ゆずりの広い山林を持っているが、人におだてられていい気になる性格で、事業の製材業はすてて顧ない。利光は兄の結婚式に帰郷した。新婦裕子は以前から義文が胸に秘めた意中の人だったが、今は心寂しく兄夫婦の幸せを祈るのだった。彼を慰める旧友の延岡憲治の妹夏子は、明朗な近代女性で義文を慕っていた。帰京した義文はマダムの紹介で楽団イエロー・スターズの一員となった。結婚した裕子は、夫が事業を不振に陥れ土地の芸者磯奴となじみ、毎日酒に酔いしれるので姑りつとの板ばさみで不幸な生活を送っていた。弁護士試験に合格した義文は、帰郷してこれを知り、激しく兄を責めた。思い出の吊り橋に佇む義文と裕子は、今にして互の断ち難い愛情に悩むが、それを振切って彼は東京へ帰った。その後を追って夏子はタイピストを志願して彼のアパートに現われた。そのころ悩みにたえかねて、裕子も兄喜一郎の許へ上京していたが、夏子からそれを聞いた義文は彼女を訪れ、利光の許へ帰えした。義文は楽団と共に地方巡業に出発し、旅行中歌姫チェリイにいい寄られるが、彼の心には裕子以外の女性は考えられなかった。利光の乱行は日を追って激しく、裕子は意を決して上京、兄の友人桜谷の病院に就職したが、彼の求愛をしりそげるため職を辞した。更に学友文子の夫からも言寄られ、やっと商船社長小河内に雇われた。社長の静養に附添って紀州へ行く裕子の列車と彼女の上京を知って旅先から東京行の列車に乗った義文は、上下する東海道ですれちがって会えなかった。然し運命は二人を奇しくも吊り橋の上で再会せしめた。ひしと抱擁する二人。その時、山の彼方の空を染めて、利光の山林が火を発して燃え続けた。