この太陽
劇場公開日:1954年1月9日
解説
牧逸馬作の同名小説の映画化である。これは昭和五年日活で村田実監督小杉勇主演で一度映画化されている。星野和平、坪井与、加藤邁の企画により、「快傑黒頭巾(1953)」の小川正が脚色し、「健児の塔」の小杉勇(往年の出演者)が監督に当った。撮影は「続魚河岸の石松」の藤井静、音楽は「健児の塔」の小杉太一朗の担当である。出演者は「家族あわせ」の若原雅夫と角梨枝子、「日の果て」の島崎雪子、新人船山汎など。
1954年製作/127分/日本
原題または英題:Forever Mine
劇場公開日:1954年1月9日
ストーリー
山内暁子は中根元雄と婚約の間柄だったが、東洋商事社長の元雄の父は、事業の後援者である皆川の娘多美枝を元雄と結ばせようと山内家に婚約解消を申し入れた。愛し合う二人は京都へ逃避行し元雄の親友杉山喬太郎を頼った。が、喬太郎の心にも暁子への愛情が秘められてあった。多美枝は元雄を好まず朴訥な喬太郎に強く惹かれていたが、彼女に対する喬太郎は冷淡であった。中根は元雄と暁子を飽く迄引離そうとし、優柔不断な元雄を篭絡して帰京を促した。暁子を失った元雄は淫奔な有閑マダム蘭子への情慾に溺れていった。喬太郎は二人の逃避行の失敗に同情を寄せるが、暁子への思慕の情は強く、暁子の弟の家庭教師となって彼女へ親近を深めてゆくのだった。元雄の乱行に心痛した中根は、打算を越えて元雄と暁子との結婚を許そうとしたが、訪れた暁子はかえって元雄の邪恋を目撃し絶望に叩き込まれる。二人の破綻に喬太郎は訝しみながらも内心暁子への恋にある期待を抱くのだった。ある日暁子を誘った喬太郎は劇場で蘭子と連れ立った元雄と出会い、憤慨して元雄を殴打し新聞記事となってしまう。失意の暁子は折しも話の起きたロンドン赴任の外交官高曾我部との縁談に心を動かされ結婚を承諾する。喬太郎は淋しく故郷へ帰って行くが二人の真の愛情を知る多美枝は二人の仲を結ぼうと喬太郎の後を追った。無頼の徒となった元雄が情痴の末蘭子を絞殺した日、総ての宿命が解けて暁子は喬太郎の胸に抱かれていた。その頃、多美枝は一筋の恋に賭けた己が生涯を閉じていた。