その夜の誘惑

劇場公開日:

解説

脚本、監督ともに「春秋鏡山城」の安達伸生、撮影は「昔話ホルモン物語」の藤井春美、出演者は「上海の女」の二本柳寛、「娘十八お転婆時代」の新珠三千代、「満月三十石船」の河津清三郎の他、宝塚歌劇の雅章子が映画初出演をしている。

1952年製作/86分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1952年10月1日

ストーリー

静かな湖畔に滞在して遊楽の日を送る都会女まき子の洗練された美貌と豊満な肉体に,村の若い船頭重吉はすっかり魅了された。月明の湖岸で二人は飽くことない官能の美酒に酔いしれたが、まき子が彼を都会へ誘惑するにおよんで、重吉はその若妻よね子の存在が邪魔と感じられるようになった。よね子は世に彼だけを頼りとする孤児だけに、むげに捨去ることはできない。何かの事故でよね子が死んでしまったら……悩む重吉の耳に、まき子は恐ろしい偶然を暗示した。苦悩の一夜が明けて重吉はよね子を町に誘った。町を目指し、湖の中心迄きた発動機船の上で、よね子は夫の魔につかれた眼ざしを見た。しかし妊娠の身を打ちあけられた重吉は、殺意をひるがえし、恐怖におののく妻と共に町の船着場へ上った。重吉を恐れて逃げるよね子、追う重吉。公園の一隅で漸く一緒になった彼らは、気まずい昼食をとったが、やがて目にふれたどこかの新婚夫婦の記念撮影が、お互いの心の溶け合いを再び感じさせた。町で楽しく行楽した二人を待っていたのは、帰途の大雷雨だった。船は転覆し、よね子は行方不明となった。村内の騒ぎでそれと知り、ほくそ笑んで訪れてきたまき子の悪魔的な姿に、重吉は彼女を殺し、自分も死のうと計った。しかし、よね子は救われ、昏々と睡る一夜を経て、何ものも断ちがたい愛情に夫婦は改めて結びついた。一方、湖岸の船着場には汚れた自分を嫌悪しつつ、都会へと去ってゆくまき子の侘しい姿が見られた。

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