「関わる者全ての人生を鷲掴みする目眩く拳闘の世界... 追う者と追われる者の相克を見つめる青春譚の背後に大人の悲恋が匂い立つ群像劇傑作映画!!」勝利と敗北 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
関わる者全ての人生を鷲掴みする目眩く拳闘の世界... 追う者と追われる者の相克を見つめる青春譚の背後に大人の悲恋が匂い立つ群像劇傑作映画!!
2023年4月の日本映画専門チャンネル"蔵出し名画座"放映にて鑑賞。
巨匠・井上梅次監督が脚本も担ったボクシング映画で、肝心の拳闘シーンの迫力や若い男女の愛憎劇にそのケレン味が遺憾無く発揮されつつも、ボクシングに青春を捧げる若者たちの前途のために己が人生を捧げる大人たちの哀愁を帯びた姿がグッとくる秀作です。
試合としての勝敗はキッチリ厳格に映しつつも、人としてあるいは生き方として誇れるのは如何なるや、というヒューマニズムが横溢しており、古臭さは無きにしも非ずですがこの大上段な朗らかさはやはりクラシック映画ならでは、と思える一本。
後の探検隊隊長である川口浩さんと特命刑事の本郷功次郎さんが演じるピークを過ぎた熟練と血気盛んな若手との対比がビビッドですが、一方で彼らを我が子のように育て鍛えるジムのオーナーの山村聰さんとバーのマダム新珠美千代さんとの想い合うも決して結ばれない大人の純愛が切なく響くところで…。
中盤のステレオタイプな青春映画スタイルとラストの絵に描いたような大団円は好みの分かれるところですが、それも往年の娯楽映画の懐の広さと感得できる名編でありました。
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