人形佐七捕物帖 般若の面 くらやみ坂の死美人
劇場公開日:1960年3月22日
解説
横溝正史の原作を「若桜千両槍」の結束信二が脚色し、「唄ごよみ出世双六」の山崎大助が監督した、若山富三郎が主演する初のシリーズもの。撮影は脇武夫。
1960年製作/日本
配給:東映
劇場公開日:1960年3月22日
ストーリー
〔般若の面〕--市村座で襲名披露興行を持ち、初日の幕を開けようとした泉屋文之助は、何者かの大芝居で興行をめちゃめちゃにされた。文之助は妹のお京を楽屋に残したまま失踪した。奈落で首を吊った頭取弥左衛門の姿を見上げたのは、人形佐七と腰巾着の辰五郎である。--両国の札差し茨木屋鵬斎が酒宴の席上、彼を取巻く画工妥女、落語家扇馬・幇間鳶平、俳諧師蝶雨、芸者お駒ら茨木屋六歌仙の名を記した画師国貞の筆になる六枚の般若の絵を六本の筒に入れ鳩をつけて放ち、七日目に絵を持ち帰った者に賞金をやる、という趣向で江戸中の人気を呼んだ。だが、その一人鳶平の惨殺によって、連続殺人事件の幕が開いたのだ。その死顔には、般若の面が乗せられていた。続いて妥女が倒れた。佐七は、この事件の鍵はお京が握っていると睨んだ。数年前、文之助の父も茨木屋一派に興行をさえぎられ死に、再びそれを茨木屋の手で繰りかえされた。復讐を誓い姿を消した文之助と弟子の半五郎に佐七は疑惑を抱いたのである。さらに、扇馬が殺された。遂に、月下の向島で、般若の面をつけた殺人鬼と佐七は対決した。面の下の顔は半五郎のそれであった。しかし、真犯人は彼ではなかった。鵬斎が文之助に殺されたのだ。お京と半五郎は自害した文之助の遺品を抱いて淋しく江戸を去った。 〔くらやみ坂の死美人〕--くらやみ坂で若い男と逢びき中の女芸人松花斎天菊が殺された。相手の男は逃げ去った。死体の転がる屋敷の門には血潮で描かれた蝙蝠の絵があった。人形佐七は調査を始めた。漆原左文次を首領にもつ蝙蝠組がなにかと邪魔だてした。佐七は天菊太夫の身許を洗った。逢びきの相手は、怪我がもとで醜い容貌と変り、小屋をやめた清十郎という男だと分った。そのころ、べっ甲問屋鍬形屋の跡とり娘お里が、何者かに刺され瀕死の状態になった。婚礼道具には蝙蝠の切紙が貼りつけてあった。相次ぎ、お里の許婚者巳之助も殺された。ある夜、お里の部屋に怪しい男が忍びこんだ。鍬形屋新兵衛である。佐七の御用の声に逃げ出す新兵衛を、清十郎が刺した。親切ごかしで入りこんだ鍬形屋を乗っとろうと、蝙蝠組とくんで芝居帰りのお里、巳之助の命を狙ったのだ。その邪心のいけにえとなった恋人天菊の仇を清十郎は見事果したのだった。