刺青(1966)のレビュー・感想・評価
全5件を表示
若尾文子… エロい… エロすぎる… なのに…
若尾文子… スゲエ…
あれは、もう殆どone and only…
映画の内容それ自体はVシネとかでも如何にも有りそうな話なのに、若尾文子が演じてしまうと格段にグレードアップしてしまう。
艶やかで淫蕩で悪女で、あんなに絢爛な品性があるとは…
あと、あの旗本役の佐藤慶の傲慢でワルイ感じ、イイねえ〜ニクイねえ〜
彼が存在することで、淫蕩な女に傾倒していく若尾文子が、より際立ったのは間違いない。
そして兎にも角にも、あのオープニングの濃密な密室の空気感をワイドなシネマスコープで、妖艶にディープに映し出した宮川一夫!まさに光と陰の職人!
しかし、やや残念なことに、新藤兼人にしては、ちょっと脚本の詰めが甘い。
権次が裏切るのは、最初から分かりきっているのに、お艶が売られるまで、意味もなく(特に伏線もなく)ダラダラと日数が過ぎたり…
また、お艶の恋人の新助は暖簾分けしてくれる予定もあった訳で、真面目なだけでなく抜け目なく仕事も出来たハズ。よって、権次の悪巧みには直ぐ気付きそうなものだろう。
ストーリー的には嵌められないとダメだが、もうちょっと人物設定とプロットには工夫して欲しかった。
そして一番残念だったのは、本作品で最も肝となるハズの、彫り師の清吉が、お艶の白い足に出会い執着してしまうシーン。
あれが全く衝動的なショットになっていない。
出来れば原作と同様にして欲しかったが、そうでないにしろ、もっと印象的に、舐めるように、お艶の白く美しい足が色気立つショットでないと、全然ダメに決まってる!
あんなんじゃ、清吉の強烈な動機が殆ど見えてこない。
こういうところは確かに、やり過ぎてしまうと無粋だが、あれじゃ、あまりに素気なさすぎて「え?こんだけ?」となってしまう。
あと女郎蜘蛛の刺青のデザイン、もっと妖しくも禍々しい凄みが欲しかった。
あれじゃ、ちょっと卑近で下卑な感じだったなあ。それが狙いだったかもしれんけど。
しかし、今回の4K特集上映、なんで『卍』上映してくれなかったかな?
何かリマスター化できない事情でも、あった?
夢に見そうな若尾文子の“お艶”
若尾文子映画祭で観賞。
全編、絵画的な美しい構図と光と影のコントラスト。
(撮影:宮川一夫)
本作の初の4K復刻版公開が、今回の映画祭の目玉になっている。見事な解像度でスクリーンに映えていた。
谷崎潤一郎の小説の主人公は女郎蜘蛛を掘られて人格が豹変してしまうのだが、映画のお艶は使用人と駆け落ちしようとする最初から肝の据わった娘だ。
若尾文子に合わせた脚色なのだろうか。
(脚色:新藤兼人)
若尾文子の少し低いトーンの声は、時にドスがきいていて、時に甘ったるくて、なんとも不思議な魅力がある。
あの当時は時代劇が多かったので、スター女優はみな和服での所作が美しいのだが、本作の若尾文子は格別の色気。
若尾文子の魅力を知り尽くした増村保造監督の演出が冴え渡っている。
山本學(当時は、学)の青白い狂気の芸術家ぶりと、佐藤慶のスケベ旗本ぶりがはまっていた!
さすが黒沢、溝口が愛したカメラマン
はっきり言ってエッチなものを見ようと思ってレンタルしました。
が、最初のところの絵(映像)を見て
・・・うっ美しい・・・
と思い、映画を見るモードに切り替わりました。
この映画はストーリーとしては退屈しない程度。
・・・ですが、とにかく絵がいいです。
それもその筈、黒沢が溝口が常用した宮川一夫がカメラマンです。
特に溝口監督は宮川の撮る絵があまりにも素晴らしいということでカメラアングルを全く指定せず、宮川の好きなように撮らせていたとのことです。
この映画は宮川のカメラと若尾文子の色気が見事に融合した作品だと思います。
色気命
みたいな映画で成功してる作品はあまり見たことがないので、高く評価しました。
全5件を表示