母の歳月

劇場公開日:

解説

野田高梧の原作を、第一部を野田高梧自身、第二部を赤穂春雄が脚色、「おかあさんのばか」の水川淳三が監督した女性ドラマ。撮影もコンビの堂脇博。

1965年製作/108分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1965年1月30日

ストーリー

〈第一部〉昭和十一年二月二十六日。江戸から東京まで五代も続いた料亭「尾花」の娘伸子は北上周介と華燭の典を挙げた。昭和十七年。三人の子供の母となった伸子は、戦火をさけて、伸子の家に女中をしていた篠の田舎信州へ疎開した。昭和十九年。学徒出陣で伸子の弟省造が出征したのと同時に周介にも召集令状が来た。田舎の人たちは都会育ちの伸子たち一家に冷たかった。そんな或る日、特攻隊で出撃するという省造が、別れを告げに帰ってきた。村の神社で姉と弟は淋しく別れをかわした。昭和二十年八月十五日。日本は破れた。と同時に省造戦死の公電が入った。やがて周介が復員してきた。昭和二十一年、伸子たちは一家あげて帰京し「尾花」の焼跡にバラックを建てた。伸子は新橋の闇市で雑炊を売って生計をたてた。しかしある日、周介は街でアメリカ軍のジープにひき殺された。その時伸子は五番目の子を宿していた。 〈第二部〉ようやくの思いで戦後の混乱期を乗り切った伸子は、銀座裏に「新尾花」という小料理屋を開店した。今では五人の子供たちも、長男一郎は銀行マンに、長女紀子はすでに嫁ぎ、次男二郎は大学生に、そして次女梢は音楽を志し、三男三郎は高校に入学していた。なかでも一郎は弟妹たちの父親がわりとなり一家の中心をなしていた。そんなうちに梢は島崎という恋人をもった。だが島崎は身体が弱かった。さんざん辛苦をなめてきた伸子は島崎が病弱なのを理由に、この結婚に反対した。しかし島崎に一途な恋情をかきたてる梢は、そんな伸子の反対をしりめに、ジプシーバイオリンに転向して、島崎のために金を貯めた。だが島崎は間もなく死亡した。島崎の身体は“原爆症”にむしばまれていたのだ。一方篠の息子正一は成人して航空自衛隊に入隊していた。やがて伸子の心配のたねだった「尾花」の後継者も三郎が継ぐことに決った。そして一郎はアメリカの支店に栄転することになった。が渡米の前日一郎は伸子に突然、結婚を誓いあったという市村藤子を紹介した。一郎の嫁は自分の手で、と夢をはせていた伸子の動揺は押えることができなかった。伸子は一人旧「尾花」の跡にたたずんだ。時代が変ったのだ--そっとつぶやく伸子を夜が深々とつつんでいった。

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