江戸無情
劇場公開日:1963年5月22日
解説
読売新聞連載・富田常雄原作を「新・座頭市物語」の犬塚稔と「中山七里」の松村正温が共同で脚色、「人斬り市場」の西山正輝が監督した時代活劇。撮影は「影を斬る」の武田千吉郎。
1963年製作/85分/日本
配給:大映
劇場公開日:1963年5月22日
ストーリー
寺社奉行脇坂淡路守は谷中の延命院に暗い影があることを知った。延命院は将軍家の帰依も厚く、多くの信者を集めていたが、実は納所坊主柳全の操る美男僧日道に魅せられた大奥女中たちの愛欲のねぐらと化していた。淡路守の秘命によって大奥へ密偵に入ったつやは脇坂家の腰元で、名越兵馬という恋人がいる。兵馬の親友で町方同心鏡源次郎が追う赤アザの浪人近藤辰之助は、柳全の手先となっていながら柳全をゆする悪党だ。つやが中臈初瀬の使いで単身延命院に日道を訪れた夜、彼女は日道に犯されながら、大奥女中の秘密を握る恋文を手にすることができた。淡路守はこれを証拠に延命院に手入れを命じた。日道らは捕まったが辰之助一人だけは逃れ去った。ある夜、兵馬との愛情にひびが入り汚れた体を恥じたつやは自殺を図ったが失敗した。悶悶とする兵馬は永の暇を願って淡路守の許から去っていった。やがて延命院事件の評定が決った。日道は死罪、柳全は晒刑、風儀を乱した大奥女中は無罪となった。完全粛清を目的とする淡路守はこの処置に断固反対した。ために老中土井大炊頭は失脚、奥女中初瀬は自殺した。僧侶の腐敗大奥の紊乱を一掃した淡路守は寺社奉行を辞した。つやは淡路守の暖かい擁護のもとに、体と心の傷を下屋敷で癒していた。兵馬は源次郎と行きつけの小料理屋「万太」の看板娘お蔦のところに入りびたりとなっていたが、つやのことを忘れられずにいた。一方、辰之助は柳全を殺して金を奪い、追ってきた宇津木をも斬り倒すという悪業を重ねていた。寺社奉行を辞した淡路守は、国表竜野に帰藩することになった。つやを忘れることのできない兵馬は淡路守の行列を追った。そんななかに、江戸に身の置き所を失った辰之助が、淡路守の行列に斬りこんできた。これを知った兵馬は疾風のごとく辰之助の凶刃の前に立った。よろこんだつやが、二人の前にとびだしたため辰之助の刃に浅傷を負った。辰之助は淡路守に倒された。数刻して、淡路守の行列を見送る兵馬とつやの幸福そうな姿があった。