手錠にかけた恋
劇場公開日:1961年2月1日
解説
「東京の空の下で」の監督・弓削太郎の原案を「母桜」の星川清司が脚本化、「黒い樹海」の原田治夫が監督した“女囚”もの。撮影は「偽大学生」の村井博。
1961年製作/71分/日本
配給:大映
劇場公開日:1961年2月1日
ストーリー
朝の上野駅、雑踏する乗客の中を手錠のまま駆け上ってくる二人の男女、里村刑事と青山信子である。信子は十年の刑をくらった網走送りの女囚だ。彼女は車中、里村に対する態度はすべてに反抗的だった。青森に着く間二度も脱走を企てるが里村の執拗な追跡に二度とも失敗した。青森で連絡船の欠航にあい信子は風邪のため発熱した。暗い病室で看護する里村に信子の瞳と肌が妖しく光った。「あたしを抱いて誰にもわからないのよ」里村への誘惑はすさまじかった。しかし里村はくずれなかった。津軽海峡を渡る連絡船の中で信子は身の上を語った。父母を原爆で失い孤児になった八ツの時から叔母の家を手伝い、その叔父に女にされたのが高校一年、家出・パンパン・麻薬のバイ人、あげくがバイ人仲間の争いから転落の大詰めが殺人だった。里村も戦争孤児で苦労して育ってきているだけに信子の話はよくわかった。そして信子を励ました。北海道に渡ると物凄い吹雪になった。列車は出発停止、里村と信子は村の役場の一室で眠ることになった。その晩、助役のおかみさんが産気づいた。医者は隣村であった。信子は甲斐甲斐しく里村と助役を指揮して無事に赤児を取り上げた。黎明の暁に信子は立って、生命の神秘に自分の人生を考え泣き伏した。そんな信子に里村はだんだん引かれていった。翌朝、二人は網走に向かって列車に乗った。信子の反抗的な態度は全くなくなり里村によりかかっているようだった。谷間を列車が抜けようとした時、雪崩が起った。崖下に転落した列車。里村は怪我一つなく信子は腕を傷つけて気絶していた。その信子をみているうちに里村は彼女を逃がしてやろうと決心、財布を彼女の懐におしこむと怪我人を病院に運ぶ馬橇の中へ寝かしてやるのだった。途中、怪我人の間にはさまって気がついた信子は、懐の財布からすべてを察し里村を追って引返した。里村は転落現場で怪我人の収容をしていたが信子をみてびっくりした。二人はしっかりと抱き合い将来を誓った。翌日、網走の門をくぐる信子の表情にはもう不安と恐怖のかげはなくなっていた。