怨歌情死考 傷だらけの花弁
劇場公開日:1973年6月23日
解説
歌手とイラストレーターを夢みる二人の若い男女が、都会に押し潰され、夢を砕かれていく姿を描く。脚本はひかわ・みよし、監督は脚本も執筆している「にっぽん歓楽地帯 トルコ三姉妹」の小原宏裕、撮影は「エロスは甘き香り」の萩原憲治がそれぞれ担当。
1973年製作/72分/日本
配給:日活
劇場公開日:1973年6月23日
ストーリー
節子は歌手になる夢が捨てきれず、ある夜、家を飛び出し東京へと向った。汽車の中で節子は彼女と同じくイラストレーターを夢見て上京するという伊東茂と知り合った。若い二人は、互いの成功を祈り、また逢う日を約束して別れた。その時、茂は節子のギターに、詩とイラストを書いて贈った。節子は、彼女と同じように歌手になろうと上京していた同郷の邦子のマンションを尋ねた。だが、邦子は都会の荒波と歌謡界の裏の汚なさに押し潰され、今ではクラブのホステスをしていた。邦子のマンションを出た節子は美容院に住み込みで働きながら歌謡学院へ通うことになった。その頃、茂はイラストを雑誌に売込みに廻っていたが、ポルノ色のないイラストでは、採用されなかった。ある日、茂は盛り場でヌード・スタジオに入ったが、モデルと喧嘩になり、眼に大ケガをさせてしまった。そのため茂はヤクザ・中井に脅され、スケコマシの一味にさせられてしまった。そんなある日、節子は茂のアパートを尋ねるが、すでに茂は引っ越して、五、六点のイラストが残されているだけだった。悄然と歩く節子の目に歌謡学院で一緒だった純子のポスターが写った。純子はマネージャーに躰を与え、プロとなっていたのである。純子の推めで節子は彼女の付き人となった。ある日、マネジャーは、茂が節子のギターに書いた詩に目をつけ、“怨歌情死考”として純子に歌わせた。結果は大ヒット。いたたまれなくなった節子は、純子の元から離れて一人で夜の舗道を彷徨った。その時、茂の乗った車が止まった。再会を喜ぶ二人は茂のマンションへ。スケコマシと知らない節子は、彼が成功したものと信じた。そして自分も歌手で活躍していると嘘をつくのだった。中井に節子を連れて来い、と言われた茂は、節子とともに東京を逃げ出し、とある温泉に隠れた。幸福な二人の生活がつづいた。だが、ある日ついに中井が二人を捜し出した。茂のナイフが中井の胸を突き刺す……。夢に破れたことを知った二人。二人は互いの傷口をなめ合いながら執拗な警察の追跡から逃れた。だが、山小屋で愛の交歓の最中に、警察が襲った。逃げる二人。茂が涯から転落した。節子は何もためらうことなく、茂を追って自ら飛び降りた……。