鯉のいる村
劇場公開日:1971年12月4日
解説
第二十一回芸術選奨文部大臣賞・第八回野間文芸賞、その他多くの賞を受賞した岩崎京子原作の「鯉のいる村」の映画化。脚本は松田昭三。監督は新藤兼人の助監督をつとめ、これが昇進第一作となる神山征二郎。撮影は南文憲がそれぞれ担当。
1971年製作/62分/日本
配給:共同映画
劇場公開日:1971年12月4日
ストーリー
達夫の村は大小さまざまな池が沢山ある。村の経済を支えるために、ほとんどの家で鯉をかっているのだ。達夫は、父が稚魚をより分ける時、ものになりそうにないと捨てたクロという鯉をかっていた。春がまだ浅い頃、東京から従妹のゆう子がきた。叔父と叔母の仲がうまくいかず、その問題が片づくまで達夫の家で預かることになつたのだ。達夫は妹ができたようで嬉しかった。達夫は毎日ゆう子を連れ、クロを放してある山の上の小さな池にでかけていった。達夫には、鯉つくりにかては右にでるものはいないといわれる伝二郎という若い叔父さんがいた。その伝二郎がクロを見て「こいつは秋になるとガラッと変わるぞ」といった。夏がきた。クロはすくすく育っていった。やがて秋がやってきて、東京からゆう子の母八重子がゆう子を迎えにやってきた。ゆう子は大喜びで達夫など眼中になかった。そんなゆう子を見て、達夫は何とか引きとめようと懸命だった。それにはクロと、ゆう子のほしがっていた組合長のサラサを取りかえるしかない。だがゆう子の返事はそっけなかった。翌朝、ゆう子と八重子は東京へ帰った。達夫はどうしようもなくさびしかった。秋も終り、鯉のコンクールが始まった。一等賞は組合長の手に渡ったクロだった。伝二郎は達夫にいった。「てんぷらにされそうだったクロを拾って育てたのはおまえだってことを、クロはよくしってるよ」。達夫は水の中の元気なクロに指をしゃぶらせる。二人の肩ごしに雪が降りてきて水の面に消える。冬が、また、そこまでやってきた。