犬神家の一族(1976)のレビュー・感想・評価
全16件を表示
犬神家がいる世界を饒舌に語る美術とカメラワーク。その落ち着き。
◯作品全体
物語としての面白さはもちろんだが、落ち着いた美術とカメラワークに圧倒される作品だった。
奥行きの広さを感じるレイアウトがあって、周りには年季の入った生活感ある建物が取り囲む。山国特有の閉塞感とでも言うのだろうか。登場人物が行き来する空間はあれど、犬神家が支配する空間にとどまらせるような印象の作り方が巧い。
例えば那須駅から那須ホテルまでの通り道。序盤で那須ホテル女中・はるが道案内をするときには入り組んだような道筋を話すが、画面で映されるのは大通りの一本道だ。金田一が犬神家へ向かうときの通り道も、俯瞰で画面を真っ直ぐに貫く道を示す。ただ、必ずその脇には年季の入った茶色い木造の建築物が取り囲む。那須ホテル自体も廊下は奥まで見えるようになっているが、部屋との距離が近く閉塞感を感じる。今の時代にこの美術をみると「昭和レトロ」という美しい響きとして捉えることもできるが、それだけでなく、生活臭が感じられる本作は「不気味に狭い空間」としての効果も感じられた。
そしてその効果を助長させるのは、落ち着いたカメラワーク。常時少しカメラ位置が高くなっていて、それは登場人物が畳の部屋に座っていても変わらない。姉妹それぞれの思惑を俯瞰して整理するようなポジションで、関係性の見通しをセリフのみならずカメラ位置からも作り出していたように感じた。特定の人物に寄ったり、リアクションを捉えるアップショットに頼ったりしていない分、物語が過度な表現になることが少ないのがとても良かった。
そしてそんな静謐と混迷を音で彩る劇伴も素晴らしかった。大野雄二によるシックで不穏な世界観の演出。ここぞという場面で主張してくるところも含め、素晴らしい劇伴だった。
殺人事件が内包する「奥行きの深さ」と「世界の狭さ」を美術やカメラワーク等で演出することで、この作品にしか作り出せない雰囲気を纏わせていた。
◯カメラワークとか
・遺言状を読み上げるシーンで、庭から座敷を映すカットで猿蔵をガラスの反射で映すカットがすごくかっこよかった。カットを割らずに情報量を増やしたり、直接映さないことで不穏な空気を纏わせたりする演出がとてもいい。他だと珠世の部屋に佐清が居たときの場面で渡り廊下の奥に影を見せるカットも良かった。
・序盤で珠世の乗ったボートが沈みそうになるシーンではジャンプカットを使ってたり、佐武に襲われたことを回想するシーンではハイコントラストのモノクロカットがあった。
◯その他
・那須ホテル女中はる役の坂口良子が美人。単純に美人なだけじゃなくて、令和の涙袋大きめな地雷系女子っぽい美人さなのがすごく印象に残った。
・金田一の有能描写、誇張しない感じが凄く良い。まわりの人物がそんなに金田一をヨイショする発言をしないというのもあるし、手元に転がり込んできた情報を金田一がうまく紐解いている感じ。それでいてキャラが立ってるんだから、素晴らしいバランス感覚だと思う。
・殺人現場とかで「ギャー!!!」って叫ぶ場面が多かったけど、ちょっとギャグっぽかった。菊人形の現場で金田一が「ギャー!!!」って叫んだ後、すぐ古館に話しかけるところとかギャップがすごい。
唯一無二の金田一耕助‼️
横溝正史の金田一耕助シリーズは、片岡千恵蔵さんが演じたり、なんと高倉健さんも演じてた‼️そんな金田一耕助像をスクリーンにおいて決定付けたのは、やはり市川崑監督と石坂浩二によるシリーズ全5作でしょう‼️特に今作「犬神家の一族」と次作「悪魔の手毬唄」は、シリーズのみならず、世界映画史におけるミステリー・サスペンスの双壁だと思う‼️ホント何度観たか分かりません‼️舞台は信州。大富豪・犬神佐平衛が死に、その莫大な遺産の相続をめぐって、一族の間で猟奇的な連続殺人事件が勃発する。名探偵、金田一耕助が推理をめぐらすが・・・‼️まず石坂浩二さん‼️ボサボサ頭にフケもタップリ(パン粉)まぶし、ヨレヨレの着物と袴で風采の上がらない、原作そのまんまの金田一を好演されてます‼️ホントにハマり役ですね‼️そして市川崑監督‼️日本の地域社会の独特な習慣や、血飛沫が飛ぶおどろおどろしい殺人を、市川崑ならではの絢爛たる映像美と素晴らしき映像センスで撮り上げてます‼️市川崑監督の映像スタイルやテクニック、技巧は日本映画というよりも、外国映画のそれに近い‼️モダンで洗練されてて、洒落っ気があって、そんな市川崑監督の映像スタイルが凝縮されてるのがこの "金田一耕助" シリーズだと思います‼️タイトルバックにかぶさる大野雄二さんの美しい音楽、コマ送りや静止画を活用したり、フラッシュバックを光と影の特殊な映像で描いたり、「水面から突き出た足」のシーンや、不気味な白マスク姿の登場人物・佐清など、映像ビジュアル的にもホント強烈ですよね‼️「よしっ!分かった!」の名セリフで名高い名物キャラ、加藤武さん紛する警部の存在感もホントに大きい‼️そんな市川崑監督の映像美や、キャストの皆さんの好演で紡がれるのがセンチメンタルな愛情物語であり、悲しい親子の情愛であるところが胸に沁みるポイントですね‼️シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロなど、世界の名だたる名探偵に勝るとも劣らない石坂浩二の金田一耕助‼️我々日本人は胸を張って誇っていい、映画史に残る唯一無二のキャラクターです‼️
島田陽子さんを偲んで
2022年7月25日大腸がんのため死去
享年69
過去に何度も鑑賞
U-NEXTで鑑賞
原作未読
原作は『八つ墓村』など金田一シリーズの横溝正史
監督と脚本は『ビルマの竪琴』『野火』『黒い十人の女』『破戒(1962)』『竹取物語』『天河伝説殺人事件』『四十七人の刺客』『どら平太』の市川崑
脚本は他に『修羅雪姫』の長田紀生と『竹取物語』『天河伝説殺人事件』の日高真也
音楽は『ルパン三世』『スペースコブラ』『小さな旅』の大野雄二
日本映画の金字塔の名に相応しい名作
遺産相続をめぐる異母姉妹の醜い争い
5人を殺害し自殺した松子
犬神家の家宝でもある斧・琴・菊(よき・こと・きく)に準えた静馬らの工作がミソ
金田一のしまった!はいつものことである
原作は映画の尺の都合とわかりやすさとビジュアル重視で多少は改変されているようだ
回想シーンはアートなモノクロ
但し白塗り三姉妹襲撃はカラー
佐兵衛の女好きが災いして人間関係がちょっと複雑でわかりづらいかも
にしおかすみこのネタでも有名な静馬の足は衝撃的
しかし佐清の証言からにして湖の底に突き刺さっていたのかは自分の中では謎のまま
菊人形に置かれた生首がどう見ても偽物なのが痛い
70年代とはいえ残念だ
とはいえあまりにもリアルだと年齢制限がかかるかもしれないので難しいところだ
静馬の母の死亡した年が矛盾している点は製作側の凡ミスだろう
70年代だけに細かい点は雑だったりする
大女優高峰草笛の迫力
島田陽子が可憐
坂口良子が可愛い
なぜ娘は似ていない
松本まりなの娘と同様の設定じゃないかといまだに疑っている
次女と三女の夫は名優だがセリフは少なく今回はとても地味だ
川口恒と川口晶は川口浩の弟と妹
いくら芝居とはいえ実際は兄妹なのに身籠るほどの男と女の関係になった役というのは心中いかがなものか
松たか子なら断るだろう
佐智の死体を目撃した小夜子演じる晶の表情は秀逸
若林の依頼で東京から那須にやって来た名探偵・金田一耕助に石坂浩二
松子の息子・犬神佐清と青沼静馬にあおい輝彦
犬神家の長女・犬神松子に高峰三枝子
犬神家の次女・犬神竹子に三条美紀
竹子の夫・犬神寅之助に金田龍之介
竹子の息子・犬神佐武に地井武男
竹子の娘・犬神小夜子に川口晶
犬神家の三女・犬神梅子に草笛光子
梅子の夫・犬神幸吉に小林昭二
梅子の息子・犬神佐智に川口恒
犬神製薬の創業者で連続殺人事件の大元になっている犬神佐兵衛に三國連太郎
佐兵衛の孫・野々宮珠世に島田陽子
珠世の祖母・野々宮晴世に仁科鳩美
犬神製薬の社員で佐兵衛との間に静馬を孕った青沼菊乃に大関優子
松子の母・お園に原泉
犬神家の使用人・猿蔵に寺田稔
亡くなった若林の上司で若林に代わって依頼主として金田一に謝礼を払う古館恭三弁護士に小沢栄太郎
金田一を那須に呼んだ依頼主であり殺された古館事務所助手・若林に西尾啓
「よし!わかった」橘警察署長に加藤武
橘警察署長の部下・井上刑事に辻萬長
手形の鑑定を行なった藤崎鑑識課員に三谷昇
野々宮家に詳しい大山神官に大滝秀治
盲目の琴の師匠に岸田今日子
金田一が泊まった那須ホテルの女中・はるに坂口良子
佐清が泊まった柏屋の亭主・久平に三木のり平
那須ホテルの主人に横溝正史
日本ミステリーの金字塔的作品。
『犬神家の一族』といえば、名探偵金田一耕助が活躍する横溝正史の有名小説です。誰もが名前を聞いたことがあるとは思いますが、「どういう話だった?」と聞かれてちゃんと答えられる人は意外と少ない気がします。
私自身、本作に対しては「なんかスケキヨってキャラクターが池の中で逆立ちしてる話でしょ」という薄くて歪んだ認識をしていたので、その認識を正すためにも、今回初めて鑑賞いたしました。
鑑賞した感想ですが、長く愛される作品だけあって非常に楽しめました。石坂浩二さん演じる金田一耕助はキャラクターが立っていて、ちょっと抜けたところもありつつ鋭い観察眼と推理力で魅力的なキャラクターでしたし、それ以外のキャラクターも個性的で面白かったです。また、現在でも活躍しているベテラン俳優が数多く出演している作品で、先述の石坂浩二さんの他にも草笛光子さんや島田陽子さんなどが出演しています。現在の落ち着いた印象からは想像もつかないようなアクティブでフレッシュな彼らの演技は、一見の価値ありです。
・・・・・・・・
日本の製薬王と言われた、犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が病死する。彼の莫大な資産の分配について記載された遺言書は犬神家の顧問弁護士・古舘が預かり、親族全員が集まってから内容を発表することになっていた。古舘の助手を務める若林は遺言書の内容から犬神一族の不吉な争いを察知し、卓越した推理力で知られていた金田一耕助へと助けを求めるのだった。
・・・・・・・・
あらすじから見てもわかる通り、実にオーソドックスで王道のミステリー作品です。登場人物全員に動機があり、みんな怪しく見えてしまいます。佐兵衛は、このような争いが発生することを予見して遺言書を残しており、様々な事件が発生する。人間の愚かさや闇の部分を見事に描き切ったミステリー作品ですね。本作は1972年6月に発刊された作品なのでこのレビューを書いている時点でちょうど50年前なんですが、全く古臭さは感じませんし、今のミステリーに多大な影響を与えていることが感じ取れる内容です。
長く愛された日本のミステリ映画。たまにはこういう往年の名作を観てみるのもいいかもしれません。オススメです!!
すごい明朝体
製薬会社で財閥の犬神家の当主が死亡。その遺言状を巡り、血の繋がらない兄弟、孫たちの間で殺人事件が起こる話。
まず、最初のキャストやスタッフの紹介が明朝体でデカデカと黒バックに白文字で示されるのでもう私の心は鷲掴みされた。こんなデカい明朝体今みると逆に斬新なのよ(笑)そこに三國連太郎とか出てきたらもうかっこ良いのなんの。
他にも今見ると斬新だなって思うのは遺言状の中身を知って興奮して思いっきりセリフが被りまくっている姉妹たちや、やたら大袈裟に驚いたり過剰な音楽の感じが今やったらチープだけどこの時代だから良い。でもスケキヨの火傷の顔見て思いっきり悲鳴上げてるのは、めちゃくちゃ失礼だなアンタって思った(笑)
跡取りを巡る話なので一見男が中心になる話かと思えばガッツリ女性達の話。3人の娘達はもちろん、珠世が案外怪しげでめっちゃ行動する女だったのが良かった。こういう財産を全て受け継いじゃうような女性って弱い感じの演出されることが多いからさ。
さらに同性愛の話や顔に火傷をおった"スケキヨ"など、ガチガチの伝統的なお金持ち一族の話の皮を被ったマイノリティの話でもあるような気がする。そう思うと最後、猿蔵が「あの人のこと忘れられないんだ」と花束を抱えて言うのも金田一に恋してるのかな?と思ったり。
というかここまで大事になるのも全てはジジイが脇目も振らずに色んな女性を孕ませてしかも正妻として扱わないからで。それで財産貰えなかったら私だって大騒ぎするよ。
間が抜けたギミック
何度もリメイクされてる話だが、ようやく2020年に初見。男色関係にあったという代官との関係はけっこう衝撃だった。というかこのコメディ基調ではないが、時々間の抜けた仕掛けが入るのは最高に楽しい(コメディリリーフっていうんですね)。この余裕にうっとりする。
遺産狙いではなく、愛情を受けたかった故の犯行、という動機がまとまりがよくて、でも白々しくもない。
日本の探偵の元祖!
金田一耕助という超有名な探偵でありながら、実はあまり知らなかったのでNetflixで見てみました。いやー、なんと言うか濃かったです。
全体的に流れる昭和な雰囲気が良いですよね~。なんだかレトロで実際知らなくても懐かしい感じです。そんなレトロな中で起こる殺人事件、見せ方がインパクト大!首ちょんぱして人形とすげ替えたり、湖から足だけ生えてたり。途中いきなり白黒になったりしましたし、作っててインパクトのある画作りをスゴい考えたんだろなっと思いました。
金田一のボーっとしつつも視点が鋭いキャラクターを若かりし頃の石坂浩二が演じています。パッと見は害もなくゆるそうな雰囲気なので、犯人を追い詰める時もズバッ!というよりジワジワ行く感じでした。時折目だけアップになったりするのも、監督が演出を試してたんでしょうね。
でも、個人的に一番気に入ったのは金田一ではなく、警部の「よし、わかった!」でした。これは真似してしまいそうです。
調べてみると金田一耕助は日本三大探偵の1人なんですね。でも、この日本三大探偵って言われてるのが全部昭和初期でいささか古い作品ばかり・・・。探偵小説好きな方は現代版だと誰になるか考えてみるのも面白いかもしれないですよね。
《よき・こと・きく》この物語を市川昆監督はラヴストーリーだとおっしゃったけれども、私としては「どんな性悪女でも自分の息子だけは可愛い」という母物だと思っています。
😳反省:良く考えたら市川先生の仰ったラブストリーというのは、あおい輝彦・島田陽子(RIP)間のラブストリーじゃなくて、あおい輝彦・高峯三枝子の母子間のラブストリー(近親相姦的な意味でなく普通の母子愛です)だったんですね。⭕ここから先はネタバレなので未だ観てない人は読まないで。あおい輝彦が自分の身を犠牲にしても庇おうとしたのは恋人ではなく母親だったものね。でも母物であるという指摘も当たらずとは言え遠からずでしょ。
(原作既読)①この映画が公開(今振り返るとすんごい宣伝作戦だった、さすが角川!)されるまでは、横溝正史の事は全然知らなかったけれど、原作を先に読んですっかり横溝ワールドにはまってしまい有名どころは忽ち読んでしまった。そういう意味では私の人生で思い出深い映画。②原作を先に読んだ場合(私は基本的に読んでから観る派)の常で、どうしても自分の中にイメージが出来てしまうから後だしの映画にとっては比較されて不利になりますわね。③この映画の場合、横溝ワールドのおどろおどろしたところ、禍々しいところ(横溝正史の小説はあくまで本格探偵小説でおどろおどろしさや禍々しさはトリックのカモフラージュなのですが)を、市川昆監督の軽妙な演出が上手く緩和して上等な娯楽作品に仕上がったので角川映画の出発点としてはラッキーだったと思う。また、先に公開されてヒットした『オリエント急行殺人事件』の手法を取り入れてオールスターキャストにしたのも映画の豪華さを盛り上げて成功だった。勿論、製作費はべらぼうに掛かっただろうけど大ヒットしたので元は取れたでしょうね。この頃の日本映画でヒットすると言えば寅さんかアニメぐらいだったので、そういう意味では角川映画が日本映画産業に与えた影響は無視できないと思う。④さて、映画自体の出来ですが、先ずはタイトルバックの斬新さと背景に流れる「愛のテーマ」で掴みはばっちり。⚪坂口良子の女中は原作より大きな役となっているが映画に軽妙さを与える上で貢献している。映画的な改善と言える。△島田陽子:タイプとしては適役。何せ原作では絶世の美女となっているので当時の邦画界では他にピッタリの女優はいなかったでしょう(他社から借りだされたのもわかろうというもの)。この後TVでも横溝正史ものは何本も製作されているが、「犬神家」については未だ島田陽子以上の適役には巡りあえていない。リメイクの松嶋菜々子はもっての他。但し、演技は下手。もう少し上手ければ市川監督の意図するラヴストーリーとしての『犬神家』が強調された、と思うのだが。△三絛美紀:竹子は原作ではかなりのデブである。「太った女性に見られがちな人の良さは全くなく底意地の悪さは姉妹一かもしれない」と描写されている。まさか、京塚昌子や春川ますみに性悪女の役をやらすわけにもいかないだろうから、(どういう選択理由からかはわからないけれど)三条美紀をキャスティングしたのだろうが、松子役の高峰三枝子の貫禄、梅子の草笛光子の中年女の崩れた色気(市川昆監督にわざと着物をだらしなく着るようにとの演出指示があったらしい)(尚、この映画では草笛光子が一番のお気に入り)に挟まれて影が薄くなってしまって気の毒。⚪川口晶:実の兄の川口亘と恋人役というのはちょっと驚きのキャスティングだったが、背徳的なテイストを作品に与えようという意図によるキャスティングであれば、まあ成功。川口晶自身の役回りで言えば、小夜子は原作ではかなり悲劇的な役回りだが、映画の方は厳かな遺言書発表の席で「私のこと、何も書いてないじゃない!」と飛び出していくところや、屋根裏で佐智の死体を見つけて卒倒するところ(原作では“たまぎる”悲鳴を上げる)(因みに死体を屋根の上に上げるという重労働を敢えてやったり、小夜子が屋根裏に上がったのは偶々なのに都合よく死体と遭遇したり―原作では珠世を連れ込んだ犬神家の別荘で発見される―ちょっと突っ込みたいところだが、絵としてはこちらの方が映画的なのは確か)、佐清の逆さ死体を発見した時に大きな蛙を抱いていたりとややコメディリリーフ的な役割を与えられていてオドロオドロしさを緩和するのには貢献している。△大滝秀治:神主が佐兵衛翁の秘密を暴露した瞬間は、第三の殺人を用意することになるのと遺言書の謎が解けるきっかけになる中盤の大事な転換点だがインパクトが薄い。大滝秀治が悪いわけではないが、重厚過ぎるのでもう少し軽薄そうな役者でも良かったのではないか。
.
自宅(CS放送)にて何度目かの再鑑賞。所謂“角川映画”の第一弾で監督の金田一モノの初作でもある。F.F.コッポラの『ゴッドファーザー』シリーズ('74~'90)の様な音楽をとオーダーされたと云う大野雄二のテーマ曲は余りにも有名。モノクロ映像を効果的に使っており、画面を分割したバストショットやカットバックの多用等、斬新な表現が観られる。適材適所と云ったキャスティングも功を奏し色褪せない印作が残る。後の“金田一耕助”像は本作で確立された感があるが、原作の金田一は殆ど頭を搔かないし、不潔でもない。70/100点。
・短い科白が細かなカット割だったり、会話の遣り取りを畳み掛ける様にスピードアップしてるかと思えば、静止画やスローモーション等も使っている。また“犬神佐智・小夜子”で川口恒・晶の兄妹共演も観られる。
・鑑賞日:2012年3月19日(月)
面白かった
リメイクも含めて3回目か4回目で『犬神家の一族はなぜ面白いのか』という春日太一さんの本を読むに当たって見返した。話が複雑でぼんやり見ていたら理解できないというか、1回見ただけではよくわからないのではないだろうか。何度か巻き戻しながら見て初めてちゃんと分かった気がする。
ケシの花の栽培をひどい悪行のように描いていたけど、モルヒネとか医療でちゃんと使っている分には別に悪くないのではないだろうか。犬神佐兵衛は従兄妹どうしで結婚させようとしていた。
先日見たハンガリー映画『リザとキツネと恋する死者たち』も那須が出て、どっちも人がたくさん死んでいた。全然関係ないのになんだろう。
極上な愛のテーマ
角川映画第1回作品。
金田一耕助(石坂浩二)シリーズ第1作。
DVD(2000年発売,スタンダード・サイズ)で鑑賞。
原作は既読です。
今ではすっかり定着した金田一耕助のスタイルは、映像作品では本作が初めて原作に忠実に描きました。風采の上がらない恰好ながら、人懐っこい笑顔と誰の懐にもスルスルと入り込む天性の才で事件の真相に迫っていく探偵ぶりは、江戸川乱歩の明智小五郎と違ってスマートさは無いけれど、非常に人間味溢れる探偵像だと思いました。初鑑賞の際、石坂浩二が醸し出すふわっとした雰囲気と少しとぼけているような演技が、金田一耕助のイメージにピッタリだなと感じました。
佐清の不気味なマスク。生首にすげ替えられた菊人形。青沼菊乃折檻シーン。湖面から突き出した青白い2本の足。…
市川崑監督が得意とする明暗の強調された映像が事件の舞台を恐ろしく、美しく引き立たせ、強烈に描き出していました。
画面を彩る魅力的な女優陣も素晴らしい。
三姉妹を演じた高峰三枝子、草笛光子、三条美紀の、怨嗟と妄念にとりつかれた人間模様はとても迫力がありました。
三姉妹が凄まじいだけに野々宮珠世の純潔が引き立つ。体現した島田陽子の可憐さも良く、佐清との恋愛模様も美しい。
母から子への愛に貫かれた事件の真相がとにかく切ない。
様々な愛のカタチが事件の様相を複雑怪奇にしていました。
愛とは時として呪縛となり得るくらいに強い想いであり、容易く人を盲目にする。しかし愛無しに人は生きられない。
そんな愛の謎を解きほぐしていく金田一耕助の活躍に魅せられ、極上のミステリーに浸れる本作は色褪せぬ魅力だらけ。
普遍的な愛に彩られた物語は観る度に共感し考えさせられるし、未来永劫人々を魅了していくのだろうなと思いました。
[追記(2021/12/19)]
角川映画祭で4Kデジタル修復版を鑑賞して―
スクリーンで鑑賞出来たことが嬉しかったです。
澄み切った映像でした。市川崑監督の仕掛けた鮮烈なビジュアルのひとつひとつがくっきりはっきりしたことで、その素晴らしさをより一層感じることが出来ました。
[以降の鑑賞記録]
2020/06/02:アマプラ(シネマコレクション by KADOKAWA)
2021/12/19:シネ・リーブル梅田(4Kデジタル修復版)
2021/12/23:Blu-ray(4Kデジタル修復版)
2021/12/28:Ultra HD Blu-ray(4Kデジタル修復【HDR】)
2023/11/10:YouTube(角川シネマコレクション,プレミア公開)
2023/11/19:YouTube(角川シネマコレクション)
※修正(2023/07/09)
女の髪のように絡み合う欲望
子供の頃、再放送の途中を眺めていたら、
「こんな気味悪いの観ちゃダメ!」と言われて、その後何となく横溝作品は私の中でタブーになっておりました。
実際どんだけ怖いのだろうと思って観ましたが、ホラーという観点からは全く怖くありませんでした。人間模様自体はドロドロを極めており怖いです(^_^;)。
科学的捜査が出来ない時代なりの工夫が興味深かったです。
結局、佐兵衛とその恩人の人格が全ての原因?
愛していない女性の子供達としても、実子に違いないのだし、もっと佐兵衛の生き様を知りたかったです。
あと原作では琴の師匠が実は菊乃みたいですが…。
映像が実験的で、今観ても新鮮に感じました。
逆さ死体の足を支える糸みたいなのが映っていました。
諏訪の光景がきれい。
諏訪の風景と作品がすごくマッチしてストーリーのどろどろとは独立して映画としての印象を向上させています。この光景の中で足が出てくるのですからまあすごいインパクトですね。そのある種アイコン化している足のシーンとスケキヨの仮面にもまして、みてて引き込まれるストーリーに感心しました。ミステリー映画は好んでみないのですが割と面白かったです。
犬神家なんて名前からしてもう十分に何かある
総合70点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
一つの地域を牛耳る一族のどろどろとした裏側と、それに絡む殺人事件を不気味に描き出す。
複雑な家族関係の相続問題でお家騒動があって十分に揉めているのに、その後に次々に起こる猟奇的殺人と謎が、複雑で怪奇な雰囲気を作る。物語が進展するにつれてこの一族の世間離れした闇の部分が晒されていく過程も良い。この時代ならば本当に似たようなことが起こっていそうなのもいい。そして死後もなおわざと混乱を招こうとしたのではないかともとれる遺言を残した初代が大きな陰を落としていた。
最初から最後まで呪われた一族である。そもそも犬神なんて名前からしておどろおどろしい。物心つかない子供のころに観たときから、物語のことは覚えていなくても顔を覆った佐清さんのことだけはしっかりと心に刻まれたほど異様だったし、その異様さがまたこの作品を象徴している。
だけど顔と声を変えても記憶や性格や能力までは変えられないので、母親相手に他人に成りすますのは難しい。いい歳した女が自分は無傷のまま力づくで若い男を次々に殺していくのも難しい。犯罪の実現性は無理があって納得がいかなかったし、そのために誰が犯人かの予想もはずれてしまった。ただし死体の処理は犯人も知らないままに別人がやったというのは斬新だった。
見れば見るほどよくできた探偵映画
手形合わせの場面で古舘弁護士が珠世の胸元(ブローチ)をちゃんと見ていたり、ずらりと並んだ菊人形の端にはすでにすげ替えられた生首がチラと映っていたり、佐武の死体が発見されたあと自室に戻った松子が佐清(静馬)に「犯人はなんで死体の首をすげ替えるなんて手間のかかることをしたのかね」これを受けて喉元で笑う静馬など、一度目は見過ごしてしまうシーンも実は伏線であることがわかる。好き嫌いはあると思うが、苦ではないと思える方は最低3回は見てほしい作品。(時間があるなら10回かな。ちなみに自分は7回は見ている)本当によくできている娯楽作品だと思う。満点といいたいが、湖に浸かった佐清(静馬)の意味合いが原作と違うので、そこを引いてこの点。
30代の青春モノ
印象三つまでと言われて三つに収まらない感じがしたのでひとつに絞りました。
犬神家の一族は、石坂金田一の最初の作品だったと思います。
わたしはもうひとりの有名な人よりもこちらのほうが金田一として好きです。
それはあのとぼけた感じとかポンコツ感などが爽やかに伝わってくるからだと思っています。
金田一耕助は私の知る限りかなりのポンコツ探偵です。
それは原作でも一緒で、死体にびっくりして腰をぬかし、未然に防がなければならない殺人やそのトリックなどを終わってから「なんで僕はこんな大事なことにきづかなかったんだ」とかなんとか言いながら慌てふためきます。
シャーロック・ホームズなんかとは好対照です。
そこに青年としてはいささか年を重ねすぎた30代の遅い青春を過ごす金田一自身の魅力がそこはかとなくにじみ出る。
石坂浩二もこのとき30代です。
この事件のときの金田一を演じるにはちょうどいい年齢です。
20代というのを右も左もわからないまま駆け抜けて、たどり着いた30代。
小さな町の大きな事件に巻き込まれながら、そのユニークなキャラクターで最後には人気モノになる金田一。
しかし、彼は人知れずその小さな町を離れてしまいます。
この映画を見るまで一番好きで最高な石坂金田一は病院坂の首縊りの家だと思ってました
今でも一番好きはそっちですが、この作品が石坂版金田一の最高傑作ではないかと思っています。
全16件を表示