劇場公開日 1976年11月13日

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「高峰三枝子礼讃」犬神家の一族(1976) pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 高峰三枝子礼讃

2025年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年、「角川映画祭」で鑑賞。

横溝正史ブームの最盛期、小学生の僕は、テレビドラマの金田一耕助シリーズ(古谷一行が演じていた)を夢中になって見ていた。
一方、映画版=本作は、テレビの映画劇場で見たことはあるけれど、映画館で鑑賞するのは今回がはじめてである。
そんなわけで、筋書きを知っているからあまり新鮮さはなかったけど、楽しめた。

まず、やはり市川監督の演出に感服した。なんといっても、犬神家の広間、親族が集まって諍いがはじまるシーンがすごい。たたみ掛けるようなセリフと、ぱっぱっぱっと短いカットをつないでいく手法は何度見ても見事としかいいようがない。ひじょうにスリリングなこの場面は間違いなく本作の見せ場のひとつだが、同時に日本映画史に残る名シーンといっていいと思います。

それから、この作品は照明も素晴らしい。日本建築の内部で表現される、美しい光と陰が印象的です。

あと、脇役の大切さということも改めて考えさせられました。
小沢栄太郎、大滝秀治、三木のり平、加藤武……。昔の役者はいい顔してます。坂口良子もなんともいえず可愛いし。
昔の俳優は、演技が達者なのはもちろん、存在じたいが絵になるんだよなぁ。

そして、高峰三枝子。彼女の迫力ある演技がこの作品の大きな見どころとなっているのはいうまでもないこと。さすがベテラン、威厳に満ちた素晴らしい芝居です。
主演は石坂浩二ということになっているけれど、僕はこの映画の本当の主演は高峰三枝子だといいたいですね。

peke