「ウルトラマンタロウ物語」ウルトラマン物語 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ウルトラマンタロウ物語
1984年に公開されたウルトラマン映画。
子供の頃VHSで何度も見、私にとっては最も記憶に留まっているウルトラマン映画。今回超久し振りに見ても、しっかり覚えていた点多々。
だから、U-NEXTの配信で見れた“再会”に感謝!
それまでのウルトラマン映画は、TVシリーズの再編集版だったり、他の作品との同時上映でTVシリーズの一篇を流す形が多かったが、本作もウルトラシリーズの映像を挟みつつ、大部分が新撮。
タイトルこそ“ウルトラマン物語”となっているが、正確には“ウルトラマンタロウ物語”。
タロウを主人公とし、少年時代からの成長、一人前のウルトラ戦士になるまでが描かれる。
それにしても、何故にタロウ…? 『ウルトラマンタロウ』放映時だったらまだしも、放映終了から10年経つ。
ご存知のようにウルトラ兄弟は血の繋がった実の兄弟ではない。同じ志を持ち、兄弟の契りを交わした仲間。義兄弟といった所。(おっと、ヤクザの世界じゃないよ)
劇中でウルトラ兄弟がウルトラの父と母の事を「父さん」「母さん」と呼ぶが、これも血の繋がりは無い。ウルトラ兄弟はウルトラの父と母の事を実親のように慕う。義家族。(だから、ヤクザの世界じゃないよ)
でも、タロウだけはウルトラの父と母の実子。
本作はウルトラ戦士たちの家族愛や兄弟の絆の物語でもある。
実の親子であり、義兄弟としても描ける立ち位置のタロウは打って付けだったのである。
地球人は一切登場せず、ウルトラ戦士が地球人と融合らしきエピソードも無い。
『タロウ』後の『ウルトラマンレオ』と『ウルトラマン80』がタロウより先に地球で闘っているなど、矛盾している点多々。
なので本作はウルトラシリーズからは“パラレルワールド”的に区別されるが、半人前の若者成長物語としてベタながら面白く出来ている。
M78星雲・光の国。
兄弟たちのように立派なウルトラ戦士になる事を夢見る少年タロウ。
声は野沢雅子。新曲は菊池俊輔なので、何だか子供時代の孫○飯を見てるみたい。
ウルトラの父からの厳しい教え。声は石田“コロンボ”太郎。
ウルトラの母からの慈愛。声は池田“メーテル”昌子。少年タロウとの会話はまるで某名作SFアニメだ。
それらを一身に受け、訓練に励む。
やがて青年に成長。声は石丸博也。以後タロウの専属声優に。訓練シーンはまるで“○拳”修行時代のジャッキー。
タロウはウルトラ戦士最強の一人。
訓練に訓練を重ね、実力は充分。
が、父はまだ自分の事をウルトラ戦士として認めてくれない。
自分の力に過信し、時折集中力に欠ける青二才の面もあるが、父は人一倍厳しい。我が子だからか…?
ウルトラ戦士になれない不満、父への反発…。その過程で自分の未熟さに気付き、また訓練に訓練を重ねる。
遂に、タロウ地球での初陣の時が。改造エレキングとメフィラス星人との闘い。勝利し、意気揚々と光の国に戻るが、父はまだ訓練を促す。
まだ訓練が必要だと言うのか。何故…?
タロウは夢を見る。宇宙に浮かび上がる悪魔のような存在…。
それは正夢かもしれない。父が恐れていた事が現実になるかもしれない。
5万年もの昔、実体を持たず、宇宙の歪みが生んだ悪魔・ジュダが宇宙を恐怖に陥れ、支配しようとした。
立ち向かった若き頃の父。秘めたる力による宇宙の歪みを正す事でジュダを倒したのだが…。
父はタロウに最後の訓練を課す。父からの強大なエネルギーをウルトラホーンで受け止める。
父がタロウに人一倍厳しく訓練を課していた理由。父は老いた。もし近い将来ジュダが復活した時、倒す事が出来るのは、この力を受け継いだタロウ、お前なのだ。
恐れていたジュダが復活。合成獣グランドキングを生み出し、ウルトラ戦士への復讐を開始する…!
宇宙最大のこの危機に、ウルトラ戦士は…? タロウは…?
ジュダは『ウルトラマン80』の後続番組として企画された姉妹編『アンドロメロス』に登場する敵キャラ。
グランドキングは知る人ぞ知るウルトラ怪獣最強の一体。強さを誇ったウルトラ怪獣の一部一部を合わせたロボットのような造形で、ウルトラ兄弟の集中光線攻撃や6人掛かりでもものともしない。
宇宙空間や廃惑星でのグランドキングとのバトルがクライマックス。
子供向け特撮作品故チープだが、これ大掛かりでやったら、ハリウッドSF超大作並みの壮大なスケール。
以上が新規のメインストーリー。
そこに合間合間に挿入されるのが、ウルトラシリーズの過去の映像。
タロウが光の国に記録されていた兄弟たちの闘いぶりを見て学ぶ。
マン、セブン、ジャック、エース、レオや80の激闘名場面。
タロウの初陣やジュダ配下の凶悪宇宙人との闘いも過去映像から。
実は『タロウ』のTVシリーズを見る前に本作を見ていたので、改造エレキング回とメフィラス星人回は繋がっていると勘違いしていた。実際は全く別なんだよね。
『エース』も然り。ヒッポリト星人回の時、父が倒れた理由はタロウへの修行ではなく、兄弟たちの危機に地球へ向かう長旅の疲れ。でも何だか本作の方がしっくり来るから不思議。
過去映像使用は強引な後付け設定でもあったり、後からTVシリーズを見ると全く違う使われ方でこんがらがせたり。なのに、驚くほど巧みに編集され、パズルのピースのように本作にピタリとハマった。
まさしく、ウルトラマジック!
最後は勿論、兄弟の絆と父から授かった力でグランドキングを撃破。ジュダも再び倒され、宇宙に平和が戻った。
が、平和に永遠は無い。
また新たに忍び寄る凶悪怪獣や侵略宇宙人の魔の手…。
宇宙の平和を守る為、ウルトラ戦士は今も闘い続けるーーー。