風の丘を越えて 西便制

劇場公開日:

解説

韓国の伝統演唱芸能パンソリを学んで旅を続ける女性とその義弟を描く悲劇的なドラマ。韓国では5人にひとりが見たと言われるほどの大ヒット作で、第一回上海国際映画祭最優秀監督賞・最優秀主演女優賞を受賞している。監督は「キルソドム」の林權澤、脚本・主演は「旅人は休まない」などで知られる金明坤、撮影は「曼陀羅」など林監督とは名コンビの鄭一成、音楽は「銀馬将軍は来なかった」の金秀哲。そしてヒロインは7歳の時からパンソリを学び、本作でも歌唱シーンは吹き替えなしで美しい歌声を聞かせて、堂々の初主演を務めたた呉貞孩。本作の大ヒットで一躍彼女はスターとなり、彼女の一重まぶたは新たなトレンドとされて、おかげで人気だった若い韓国女性の二重まぶたの整形手術が激減するといった現象まで生まれたという。共演はやはり新人の金圭哲ほか。

1993年製作/韓国
原題:西便制
配給:シネカノン
劇場公開日:1994年6月25日

ストーリー

1960年代初め。ある山間の村にドンホ(金圭哲)という男が辿り着く。そこで今時珍しいパンソリを聞かせる女性に出会う。彼はその歌声に酔いしれながら、回想する。ドンホが幼い頃、彼の村にキム・ユボン(金明坤)というパンソリの歌い手がやって来た。ユボンはドンホの母である未亡人と恋に落ち、子をもうけようとするが、お産は失敗に終わり、彼女も死んでしまう。後に残されたドンホと、以前から連れていた養女ソンファ(呉貞孩)を連れユボンは旅に出る。ユボンはドンホに太鼓を、ソンファに歌を教えながら旅芸を続ける。ソンファとドンホは鼓手と唄い手の名コンビに成長するが、やがてパンソリは時代から疎外され始め、ドンホはユボンのパンソリに対する異常な情熱が理解できず、次第に争うようになる。ある日、ドンホは家出し、残されたソンファは絶望から一時声が出なくなる。ユボンは治療のために漢方薬を彼女に与えるが、さらにパンソリの芸を極めるために、薬を過度に与え、副作用で彼女を失明させてしまう。これもユボンが芸で大切だという“恨(ハン)”の気持ちを教えようとする思いからだった。そしてついに芸をものにしたかと思えた時、父ユボンはソンファに対する罪悪感を抱きながらこの世を去る。かくして1950年代が過ぎ去った。成人したドンホは父とソンファが無性に恋しくなって2人を探し歩く。彼は文字絵のナクサン(安柄京)を通して、ひなびた旅館でソンファと再会する。彼は太鼓を叩き、彼女はそれに答え歌う。互いを語り合うことなく、一晩を過ごした後、2人は無言で別れる。ドンホは再び旅に出て、ソンファもまたしばらく住んだ旅館を出て行くのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0韓流以前の名作

2023年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

ずいぶん昔に観まして、
タイトルさえうろ覚えだったものの、
パンソリの歌声があまりにも
美しく哀しいのが印象的で
忘れられずにいました。

近代化していくにつれて
職を追われていくパンソリ。
国も仕事も違っても
日本で今同じような状況にある仕事人も多いのでは。

細かいところはちょっと忘れてしまいました。すいません。
映画は多少できすぎな感もありつつも、
姉弟、それに父の抱えてる
(日本語で言うなら)業とでもいうものがぶつかりあい、
最後ではそれが浄化されるかのような。

草原をわたる歌と太鼓に魂がふるえます。

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こまめぞう

5.0韓国映画のマイベスト

2019年4月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

韓流ブームが始まるずっと前だったが、岩波ホールでこの映画を偶然鑑賞した。「感動」という言葉が陳腐に思えるような、絶句するほど素晴らしい作品だった。その後、韓流ブームもあり、韓国映画を数多く観てきたけれど、今も私の韓国映画ベストワンです。
人間とは、人と人の繋がりとは、家族とは、芸事とは、そして生きるとは…色々なことを感じ、考えさせられる映画でした。そして、この映画を通じて、韓国のパンソリという伝統音楽にも興味を持ちました。
先日、ソウルに行って、大韓民国歴史博物館という所を見学したら、現代史のコーナーで韓流映画が紹介されていて、その中でもメインでこの映画が取り上げられていました。それを見て、韓国でもこの映画は重要な意味を持つ映画なんだな、と改めて認識しました。

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Rosa
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