傷心の湖
劇場公開日:1949年9月13日
解説
アンドレ・ポールヴァが製作した一九四六年セイア・フィルム作品で短篇映画監督から昇進したルイ・キュニイの第一回長篇映画である。原作はA・ド・ラコンブ夫人の短篇小説で、女流劇作家マルセル・モーレットが脚本を書き、一流劇作家ジャン・サルマンが台詞を書いている。主演者は「幻想交響楽」「最後の億万長者」のルネ・サン・シールで、「海の牙」のアンリ・ヴィダル、「聖バンサン」「巌窟王」のエーメ・クラリオン、ナタリー・ナッティエ、ドニーズ・グレーが助演する。撮影はサイレン時代からの古参レオンス・H・ビュレルで、装置は「ジブラルタルの鮫」のエーメ・バザン、音楽はマルク・ベルトミウが作曲しているが、ワルツだけはルネ・クロエレックが書いた。
1946年製作/フランス
原題または英題:Etrange Destin
劇場公開日:1949年9月13日
ストーリー
パリで外科の名医といわれるガロア博士は、後見しているパトリシアという娘を、わが子の如く愛していた。彼は苦味走った中年男で上品な感じなので、美しい患者たちに追回されて迷惑していた。一九一四年の初夏、パトリシアはブールジェ湖の博士の別荘に避暑した。そして近くの別荘に一人暮している青年アラン・ド・ソーリュと知合い、彼女の周囲に集って来る若者達を置去りにして、アランにヨット操縦を教わってばかりいた。二人の間に愛が芽生えたことはもちろんで、ガロアがパリから逃げて来ると、パトリシアはアランと結婚すると打明けた。この告白はガロアを深く失望させた。彼自身がパトリシアを愛し始めていたことを悟り、今度はそれを告白するつもりだったのを、彼女に先をこされて了い、パトリシアとアランの結婚に祝福を与えねばならなかった。パリへ新婚旅行に来たアランは、花嫁をサン・セヴラン街の小さな下宿に案内した。彼が学生時代にジャン・ロアゾーの名で住んでいた所であった。それから間もなく第一次大戦はぼっ発し、アランは陸軍小尉として出征、ガロアは野戦病院勤務、パトリシアはパリで救済事業に奔走した。ある日ガロアからアランの遺品と身分証明書を渡され、パトリシアは寡婦となった。月日は流れ、彼女の嘆きも薄らいで来たが戦争は続いた。一日サン・セヴラン街を訪れ彼女は、ジャン・ロアゾーが帰って来たと聞いて驚いた。記憶を失い、身分証明書を持たない男は、彼女の良夫アランに相違なかった。しかも彼を世話している女がいた。ジェルメーヌという看護婦だ。パトリシアはアランの死を報告したガロアを責めたが、博士は真実アランが生きるとは思わなかったのだった。それほど奇跡的な生還だったのだ。昂奮した博士はパトリシアに愛を告白したところ、彼女は怒って痛く彼を非難した。数日後ガロアは自殺した。パトリシアは療養所を建てるという口実で、ジェルメーヌの住居を訪ねたが、アランは妻の顔を覚えていない。彼女は湖畔の別荘にジェルメーヌと共に、ジャン・ロアゾーを招待し、男の記憶を呼びもどそうとしたが、ジェルメーヌが身重であると知るや、パトリシアはあきらめた。しかし、運命は気紛れであった。パリへの帰途、自動車事故でジェルメールは即死し、酷い打撲傷を受けて病院に運ばれた男は、このショックで失っていた記おくを取もどし、戦傷以来のことは一切その記憶からぬぐい去られてしまった。彼はアラン・ド・ソーリュとして、妻パトリシアの胸に湖畔の愛を求めるのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルイ・キュニイ
- 脚本
- マルセル・モーレット
- 原作
- A・ド・ラコンブ夫人
- 台詞
- ジャン・サルマン
- 製作
- アンドレ・ポールヴェ
- 撮影
- レオンス・H・ビュレル
- セット
- エーメ・バザン
- 作曲
- マルク・ベルトミウ
- ワルツ作曲
- ルネ・クロエレック