秋の女性

解説

かつては北欧女優の随一として知られ「令嬢ユリエ」「喜びなき街」その他に主演したアスタ・ニールセンが久し振りで映画界に復帰して作った第一回トーキー出演映画で、監督には「初恋(1930)」のエリッヒ・ワシュネックが当ったもの。原作はアルフレッド・シロカウエルの小説「ヴェラ・ホルクとその娘」で、フランツ・ウィンターシュタインと監督のワシュネック自身とがそれを映画用に改作脚色した。撮影はブルーノ・モンディの担任で、編曲には「世界のメロディー」「吸血鬼」のウォルフガング・ツェラーが力を致した。ニールセンを助けて出演する人々は「制服の処女(1931)」のエレン・シュヴァネッケ、エリー・ボス、ハンス・レーマン、「モナ・リザの失踪」のアントン・ポイントナー等である。

1932年製作/ドイツ
原題または英題:Unmogliche Liebe

ストーリー

ヴェラ・ホルクは十五年前軍人だった夫に死なれ、二人の娘を抱えてロシアの国境からベルリンに出て来た。そして自分は鉄の様な意志を以てある陶器工場で彫刻師として働き続けて来た。今は姉娘ノラは音楽家となり、妹とトニイは写真屋に勤めて親子三人は平和に日々を過している。娘達も母親もお互いに理解し合って秘密を持たない水入らずの生活だ。ところが一夜音楽会でヴェラはシタインカムプという彫刻師と知り合いになった。彼はヴェラの才能を惜しみ、石膏彫刻の展覧会に出品することを勧め、自分のアトリエを貸し与えた。ヴェラは初めて娘達に対して楽しい秘密を持つ様になった。四十才のヴェラはこの頃つくづく自分の生活が空虚だった事を思った。子供の為という事だけで闘って来た十五年間の寂寞さよ!そして今の自分の幸福感を楽しく思った時ヴェラは愕然とした。その甘い感情と彼女は毎日闘った。しかし彼女は闘っても逃げる事は不可能なのを知った。そして彼女の出品は一等賞を取った。恋と芸術との勝利!しかし翌日の新聞はヴェラとシタインカムプとの醜聞を書き立てていた。ヴェラは十五年間の忍従の生活の末、今燃え上がった愛の焔に身を焼いても悔いはない、と娘達に告白した。ノラは母に結婚を勧めて彼女の婚約者の許へ去った。負け嫌いの妹トニイは新聞社に怒鳴り込んだ。しかし彼女は新聞社でシタインカムプには妻があることを聞いた。トニイからこの事を聞いた時ヴェラは信じ得なかった。ヴェラはシタインカムプの妻が入院しているという病院を訪れた。そこで、夫の愛だけを頼りに生きている哀れなシタインカムプ夫人の姿をヴェラは見た。押しつけて来た自分の情熱が、漸く時を得て燃え上がった四十才の恋も、かくてもみ消してしまわなければならないのか?病院を辞してヴェラ・ホルクは、過去十五年の間にも感じたことのない淋しさを何うすることも出来なかった。

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