美しき青春

解説

「母の手」と同じくジャン・ブノア・レヴィとマリー・エプスタンが共同監督したマドレーヌ・ルノー主演映画で、ヴィッキ・バウムの小説を監督者達が協力脚色したもの。ルノオを助けて「掻払いの一夜」のコンスタン・レミーと「みどりの園」「ジェニイの家」のジャン・ルイ・バローが共演し、「地の果てを行く」のロベール・ル・ヴィギャン、「みどりの園」のモーリス・バケ、新人エレナ・マンソン、オデット・ジョアイユー及びルネ・ダリー、古くから名あるジャンヌ・エルブラン等が助演している。キャメラは「暁に帰る」のレオンス・H・ビュレル、装置は「にんじん」のリュシアン・キャレ、音楽は「上から下まで」のマルセル・ラテスが夫々担当している。

1937年製作/フランス
原題または英題:Helene

ストーリー

アルプス連峰に近いグルノーブルの医科大学で、エレーヌは学業にはげんでいた。父に死なれた一家を養うため、学位を目ざして彼女はあらゆる困苦と戦った。仲良しの友達のなかで、最も親しいのはピエール・レニエだった。彼は医師である老父の切望で医学を学んでいるが、解剖を見ても胸が痛むほど繊細な感覚の持ち主で、音楽家になりたい志望を抱いていた。彼等の指導教授は癌の研究で有名なアムボアーズだった。教授の夫人は若く美しい歌手で舞台への執着を断ち切れず、科学者たる夫との生活に惓み果てていた。夏の一夜、学生達は教授の宅に招待され、ピエールは夫人に音楽の才能を認められた。エレーヌも彼の天分を朽ち果てさせるのを惜しいと考えて、音楽家になる事を勧めた。いつしか二人の間には清い恋が生まれ、夏の休みに一同で高原へ出かけたとき、エレーヌは彼に処女を捧げて悔いなかった。秋になると彼女は体の異常に気がついた。教授の助手をしてやっと学資を得ている身で、どうして子供を育てられよう。前途に迷っているピエールを見ると、彼女は打ち明ける事もできなかった。或日ピエールは老父の訪問を受けた。父は黙って癌のレントゲン写真を示した。問う迄もなくそれは父の病症だった。やがて死ぬであろう父の後をついで、彼は残された一家を養わねばならぬ。音楽への希望は無惨にも打ち砕かれたのである。やがて学期試験が来た。厳格なアムボアーズ教授の口頭試問にピエールは落第した。慰めるエレーヌを誘って、二人は思い出の高原へ向かい、山小舎の宿へ泊まると、ピエールは隙を見て毒薬を腕に注射した。エレーヌには恐ろしい殺人の嫌疑さえかけられたが、アムボアーズ教授の尽力で無罪が証明された。間もなく彼女は母親となった。今後は子供の為に生きねばならぬ。そしてエレーヌは見事に学位を獲ち得たが、恩師アムボアーズ教授は夫人に去られた悩みから、研究への気力も失っていた。今度は自分が先生を助ける番だとエレーヌは決心した。彼女の心からなる激励で教授は再び研究への情熱を取り戻し、愛する者を失った二人は、手を取り合って科学への道へ進んで行った。

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