人生の馬鹿
解説
「たそがれの維納」「女ひとり」のパウラ・ヴェセリーと「夢見る唇」「郷愁」のルドルフ・フォルスターが主演する映画。原作はマリアンネ・フォン・アーンゲルン作の小説で、これをエルヴィン・ヘスが脚色し、「卒業試験(1933)」「題名のない映画(1935)」のカール・フレーリッヒが監督製作したもので、撮影には「たそがれの維納」「未完成交響楽(1933)」のフランツ・プラナーが、音楽には「白馬旅館」の作曲者として名あるラルフ・ベナッキーが、それぞれ当たっている。助演俳優はヒルデ・ワグナー、グスタフ・ヴァルダウ、グレトル・タイマー、ハンス・オルデン、エゴン・フォン・ヨルダン等舞台人が多く、「早春(1936)」に出演したジョルジュ・ブーランジェも特別出演している。
1937年製作/95分/オーストリア
原題または英題:Die Ganz Grossen Torheiten
ストーリー
テレーゼ・ブランドルはウィーンの俳優学校へ入学するため、故郷の小さな町を出発した。ウィーンのホイヤー伯爵夫人が、彼女を可愛がって学資を出してくれるというのであった。都の停車場へ到いたテレーゼは、厳しい規則的な生活が始まる前に都会を見物しようと思い、小さなホテルへ泊まって、その夜は酒場へ出かけて行った。そこで彼女が知り合いになったのは、演出家であり俳優学校の教授であるダアレンだったが、二人はお互いに素性や名前を偽って酒を飲んだ。二人は互いに心から惹きつけられたが、ダアレンは彼女を素性のいかがわしい女であろうと思っていたのである。翌朝テレーゼは、彼女の泊まった宿は真面目な人の泊まる所でないのを知って愕然とした。困惑と後悔に自失した彼女がウィーンを立ち去ろうとした時、伯爵家から迎えの女教師に会って夫人の許へ送り届けられた。やがて彼女は入学試験に及第して、新入生の演技試験が行われることになった。その席で教授ダアレンを見たテレーゼは驚きと共に懐かしさで一杯だったが、彼はそ知らぬ顔で相手にしなかった。諦めきれないテレーゼは、もう一度ダアレンと話をしようと思ったが、彼はいつも冷たい態度で彼女をしりぞけるのだった。謝肉祭の日、ホイヤー伯やテレーゼに夢中になっている漁色家のギギ男爵と一緒に、彼女は或る酒場へ来た。そしてそこでテレーゼは再びダアレンと出会った。表面は冷たい態度を見せているが、彼は次第に深まって行くテレーゼへの愛情に苦しみ、その苦しみから逃れようとして、永年の知り合いである女記者ニーナと婚約をした。これを知ったテレーゼは最初の夜以来忘れることの出来なかったダアレンの愛が、もはや完全に彼女から離れ去ったと思い、ただ一途に死を求めて走り去ったが、危ないところを救われた。そして彼女は伯爵夫人の前で泣きながらウィーンに到いた最初の夜の出来事を打ち明けた。翌日、夫人はダアレンと会合した。凡てを聞かされた彼は、今やテレーゼに対する愛情が如何に真実で深いものであるかを知った。テレーゼはその時、ウィーンを去ろうとしていた。列車が出発する直前に、ダアレンはテレーゼの許へ駆け寄った。今は心から愛する女性を永久に自分のものとするために。
スタッフ・キャスト
- 監督
- カール・フレーリッヒ
- 脚色
- エルヴィン・ヘス
- 原作
- マリアンネ・フォン・アーンゲルン
- 撮影
- フランツ・プラナー
- 音楽
- ラルフ・ベナッキー